心霊スポットのダムの先にある場所
華
第1話 深夜のドライブ
※このお話は、筆者の実体験です。
私の実家は四方を山に囲まれた田舎町です。季節を楽しめる自然豊かな場所で、幼少期から山や川、竹やぶやへと探検に行き伸び伸びと過ごしました。
私の住んでいた町から、もっと山奥に行ったところにダムがあります。ダムは昔は町があった場所を埋め立てて建設されました。
私の父は、もともとダムのあった場所に住んでいて豚や馬も買っていたそうです。今では信じられないような田舎町の暮らしですね。
そのダムは週末はボートや釣りで賑わっていますが、地元民には自殺の名所として知られていて、度々遺体が発見されることがありました。
私が幼少期の頃、町民の方がトラックごとダムに転落して亡くなった時のお通夜で
―借金を苦にしてトラックごと真っ逆さまに落ちたって……
―ブレーキ痕が無かったって。ガードレールを突き破っての自殺だった……
と知らない人たちがひそひそと話していました。この会話を今でも覚えているほど当時の私は衝撃を受けました。ダムは自殺だけではなく心霊スポットとしても有名でした。
ダムの先には、二箇所トンネルがあります。小学生になると自転車で友達とダムを越えてトンネルに探検に行きました。そこは短いトンネルなのにも関わらず、中は暗くひんやりとしています。歩道が異様に狭くて、車が通るとヒヤッとしましたが、もちろん幽霊には会いませんでした。
もっと、ずっと奥には三つ目のトンネルが存在し、そこもまた心霊スポットとして有名ですが、あまりに遠いので自転車ではいけませんでした。
時が流れ、私は自動車免許を取得してから、友達と深夜のダムに行ってみようとドライブに行ったことがあります。
山奥なので、鹿や猿の出没に気をつけながら運転しました。私達はダムを見てから、二つ目のトンネルを超えました。
ここは行き慣れた場所なので怖いとは思いませんでしたが、やはり深夜は不気味でした。
車ならもっと山奥の三つ目のトンネルに行けるのではないかと考えて、私達はひたすら山道を進みました。その頃はまだカーナビが無かったので、山道がどこへ抜けるのかさっぱりわかりませんでした。
舗装された道が終わると、すれ違えないような狭い山道をひたすら進みました。このときは、反対から車が来たらどうしよう、すれ違えるかな?なんて考えながら車を走らせていて、かなりドキドキしました。
暫く進んだにも関わらず、一向に道が開けなくて焦り始めた頃、やっとすれ違えるような広いスペースが見えたのでそこで車を寄せて停車しました。
その時、ヘッドライトに照らされてフェンスが見えたんです。
私はフェンスにゆっくりと車を近づけてその先に何があるのか見ました。
そこにあったのは、廃校でした。ここは、昔父が通っていた学校で、それに気付いた私はちょっと嬉しくなりました。
友達がエンジンを切ってちょっと止まって見てみようと言ったので、私はヘッドライトを消してエンジンを切りました。ヘッドライトを消すと辺り一面が暗闇に包まれ、フェンスの向こうに朧気に学校が浮かび上がるのが見えます。
―肝試しできそうだね?
友達が嬉しそうに言いました。
―それは、無理! 怖すぎるよ
流石に車から降りる勇気はありませんでした。
次第に私は、恐怖感を感じ始めました。車の窓を急に誰かに叩かれたらどうしよう?
フェンスから誰か出てきたらどうしよう?
―怖い。
その時、学校の奥に赤く光るライトが見えました。
―……非常口のライト……?
私は恐怖のあまりエンジンをかけました。背筋が凍り、鳥肌が立ちました。
それは、まさに第六感でした。
これ以上ここにいてはいけないと察知してヘッドライトを付けるなり車を切り返しました。
すぐに車を発車させ、もと来た道を戻り、トンネルとダムを越えて帰宅しました。
結局3つ目のトンネルまでは行けませんでしたが、家についたときの安堵感と言ったら……。
とてつもない恐怖感でした。
翌日、私は気付きました。
父が通っていた小学校は廃校になってからすでに五十年近く経っています。そんな廃校の非常口に電気が付いているはずがない……と。
あれから、昼間に確かめに行こうかと思ったこともありますが怖くて行けませんでした。
今では廃校はすでに取り壊されて、更地になってしまったそうです。
深夜に廃校と三つ目のトンネルを見に行く機会がありましたら、どうぞお気をつけ下さい。
了
心霊スポットのダムの先にある場所 華 @kyousha
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