間奏曲 Part1

 九重天花は中学校に入学するとすぐ図書室に行くようになった。無口で物静かな天花にとって一番の友達は本だった。本を読む事を嫌う両親の事もあって図書室が開いている時間はそこにこもってひたすら読む事がちょっとした幸せだった。


 ある放課後、ライトノベルを読み終わり図書室を出た廊下で追いかけてきたクラスメイトに呼び止められた。

「ねえ、九重さん。どんなご本が好きなの?」

 望月晴香はそう天花に声を掛けた。同じクラスで背が高く長くきれいな髪の望月さん。明るくてクラスの人気者。世界の違う人だと思っていた。そんな彼女に突然呼び止められて思わぬ質問に驚いた天花の手はセーラー服のスカーフを触った。

「なんでも。物語ならそれでいい」

 天花がボソッとそう言うと晴香に笑顔が広がった。

「私も小説とか好きなんだ。クラスじゃ中々そういう話を出来る人いないけどね。ねえ、天花ちゃん、そう呼んでいい?ありがと。天花ちゃんの今一押しって教えてくれない?私も教えるからさ」


 これが始まりだった。晴香とは本の趣味も似ていてお互いに面白いと思った本を教え合ったりした。そして晴香の思わぬ相談に驚かされたけど、親友の願い故に受け入れた。


 中学2年生の終わりの春休み、天花は再び孤独になった。そして晴香が願って始めた事、天花は3年生になってからは一人で続けた。

 その儀式の目的、理由は晴香と天花の二人しか知らない。ただ同中だった連中はその不思議な儀式を知っていて水面下では「キモい」「何かの宗教?」という言葉と共に広がり親友の死後「オカル子」という陰口も生まれ天花もそう言われている事には気付いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る