怪奇と才気と猟奇も溢れる新世代ホラー

ご近所と学園を舞台に繰り広げられる連作短編形式の怪異譚です。校舎などに絡む都市伝説風味の物語もあれば、旧時代由来の怨念ものもあって、それぞの短編はどれも仕掛けが凝っていてます。

各エピソードの締め方が秀逸で、思わぬ裏話が飛び出たり、仄かな謎を残りたりとバラエティに富み、達成感と満足感も味わうこともあれば、続きが気になることも稀ではありません。

対峙した怪異が後のストーリーに絡んで来るスタイルも、横糸と縦糸が編み込まれて展開に豊かな色を添え、派手な柄を浮かび上がらせます。

巻き込まれ型でありながら積極的に難事件に挑む主人公。そして、お洒落な美少年という一風変わった真性怪異の相棒。二人の相性はなぜか抜群で、幕間の軽妙洒脱な会話もまた面白い。

最も特徴的な部分は、次々に出没するデザイン性溢れる怪異です。意外な因縁と予想もできない動機。怪異に成り果てた理由もさることながら、潜む形態、災いや呪いの伝染方法も多様で、趣向が凝らされています。

バディで難題に立ち向かうという形式を取りながらも、他に類例がない独自の雰囲気でテンポ良く、ストーリーが紡がれます。これは最早、「新感覚」との表現さえ古く思わせる、作者の才気が溢れる新世代のホラーです。

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