1000年先も読み継がれる小説

「妖精の物理学」で電撃大賞を受賞された電磁幽体先生のアカウントが告知ツイートをリツイートしてタイムラインに流れてきた結果、この作品を知ることができました。本当にもう素晴らしい作品を知ることができて、感謝の言葉もありません。
あらすじを読んだとき、私は古典的なジュブナイル作品なのだろうと感じました。しかし、それは私の浅知恵から生まれた大いなる侮りでした。この作品は古典的なのではなく、原始の魂に訴えかける作品だったのです。
空へ飛び立つカフカの、なんと凛々しいことか!目の前に広がる情景の、なんと雄大なことか!解放されて見た初めての世界の美しさは克明に描写され、自由を求めてやまない人間の本能を強く揺さぶります。カフカは新天地たるココット村にて、未知の文化に触れ、友情を育み、負の歴史を知り、レースに参加します。これらはすべて人類の持つプリミティブな欲求を強く刺激し、われわれの心の中にくすぶっていた熱く燃える炎を思い出させてくれます。
この作品の芯にあるのは普遍性です。おそらく1000年前も1000年後も変わらないであろう人類の営みそのものです。一見シンプルなこの作品が、大きな深みを醸し出しているのは、この作品が人間の根幹に刻まれた神話の具現化であり、われわれの魂はすでにそれを知っているからです。われわれとこの作品は魂の兄弟なのです。
この作品が古びることは、ずっとないでしょう。1000年先も読み継がれていると思います。

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明けの空のカフカ

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