素晴らしい

電撃大賞の受賞作ということで拝読。タイトルで今話題のブルーライト文芸か?と思い読み始めてみたら、これは児童文芸……?

困惑しつつも読み進めていくうちに、何やらすっかり、カフカの可愛らしさにハマっている。特徴的だが、どうしてなかなか楽しく、癖になる文体だ。翻訳小説を思わせる言い回しにもセンスがある。元気いっぱいなカフカを見ているうちに親心が芽生えてきて、彼女と一緒に感動したり、危なっかしい行動にハラハラしたり、思わず笑顔になったりと……読み切る頃にはすっかりこのお転婆な少女に魅了されてしまった。ラストも爽やかで読後感も良い。

サブキャラクターの造形も素晴らしい。特にベルさんとクレオ(ベルさんについてはネタバレになるので割愛するが)クレオはツンデレの一言では言い表せない、現代的な悩みを持った等身大の女の子、といった感じでこれまた可愛らしいキャラである。同じ境遇の子たちに人気が出そうだ。

徹頭徹尾、なんとも王道でストレートで真摯な作品だった。昔の青い鳥文庫のような、小学生から中学生の読者を意識しているようでありながら、大人にしか分からないほろ苦さもある。NHKでアニメをやっていてもおかしくない、真に万人受けする作品だった。