あとがき

あとがき

 ウィンターローズ荘の夜が明け、ウィンターローズ荘の夜から始まった物語がようやく終わりまで来ました。三千年には及びませんが、連載開始から二か月ちょっと経っています。


 青い光です。ブルーライトです。PCに向かって作業をしていてずっと見つめているとよくないと言われています。

 作者自身がずっと青い光ブルーライトをいっぱい浴びながら、この物語の連載の作業をやりました。

 よくないですねぇ。

 でも、やっぱりブルーライトというとヨコハマだよね。

 横浜は海辺の街のいろいろな雰囲気を肌で感じることができる街で、好きな街です。

 この物語を書いていたころは、月に二‐三回ぐらいのペースで横浜に行っていました。


 説明の順番が逆になりました。

 この物語を書いたのは二〇一三年のことです。

 この年の春にイギリスに行きました。歳上の方に付き添って、というのか、歳上の方に連れて行ってもらって、というのか、よくわかりませんが。

 そのときに現地ツアーで行ったソールズベリーという街が印象に残りました。

 大聖堂がある、近くには古代遺跡のストーンヘンジもあるということで訪れたのですが、そのときには通り抜けただけの街のたたずまいがなんとも言えませんでした。

 日本で都会を歩いていて「あ、ここの角を曲がってこの街に入ってみたいな」と思ったり、電車の窓から見かけて「この近くの駅で降りてここに行ってみたいな」と思ってしまうような場所があります。そういうところと共通するものを感じたのです。しかも、ここは別の国で、そう思って行ってみるとぜんぜん違った、という展開もありそうでした。

 郊外に出るとこんどは牧場か農場かよくわからない土地が遠くまで広がっていました。これが昔は貴族の土地だったんだろうな、と想像していました。

 そのころ、秋葉原にカフェ「月夜のサアカス」というカフェがありました。このお店に、イギリスのメイドさんについての本や一九世紀までのイギリス社会についてがいっぱい置いてありました。それを読むうちに、メイドさんの生活は、当時のイギリス社会のおカネ持ちの生活のスタイルと深く結びついていることがわかってきました。

 それで、一九世紀、「大不況」時代のイングランドでお屋敷に勤める「メイドさん魔法少女」の物語が書きたくなったのです。

 ほかにイギリスで訪れて興味深かったのはベーカー街のシャーロック・ホームズ博物館でした。べつにほんとうにホームズという人物がいてここに住んでいたわけではないからなぁ(架空地名として「ベーカー街221」を創作したらあとでその番地が現実にできてしまった)、と、最初はたいして期待していませんでした。しかし、行ってみると、内装や家具などがヴィクトリア朝風で統一されており、部屋の狭さの印象も含めて、ヴィクトリア朝のロンドン人ってこんなところに住んでいたんだ、と実感できたのが収穫でした。基礎知識がない悲しさで、ほんとうにヴィクトリア朝の家具や内装なのかはよくわかりませんでしたが。

 あ、あと、博物館の女性スタッフの制服がメイド服……ってけっきょくそれか……。

 イギリスに行く飛行機では窓際の席でした。飛行機が空港に停まっているあいだには「この薄い主翼にこんな重そうなエンジンがついてて大丈夫かな」と思っていたら、高空に上がってからは逆にその軽やかな翼に支えてもらっているという感じが強かった。その感覚もこの物語にはとり入れています。


 この物語を書いたすぐ後に「月夜のサアカス」は閉店しました。イギリスに行くときに利用したヴァージン・アトランティック航空も日本から撤退してしまいました。最近では仕事が忙しくなり、横浜に行く機会もほとんどありません。


 ところで、この物語は『さわらび』と設定・登場人物が共通です。どちらから先に読んでくださってもかまいませんので、『さわらび』もよろしくお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/16816700428898415148


 この物語では、ローマ人より前の時代の人たちがローマ神話の神様の名まえを持っていたりしますが……まあ、笑って許してください。だいたい、そんな昔の人たちと一九世紀後半の英語でコミュニケーションができるわけがないのですけど、この世界全体に自動翻訳装置みたいなのが働いているとでも思っていただければ……。

 なお、イギリスの「オーク」を「樫」とするのは誤りなのだそうですが、「樫」の訳が定着していると考えて、『さわらび』に続いてこの物語でも「樫」としています。


 ここまでこの物語をお読みいただきまして、ありがとうございました!

 またどこかでお目にかかりましょう。


 清瀬 六朗

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青い光 清瀬 六朗 @r_kiyose

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