初めての征服

夏伐

珊瑚

 私たちの惑星はもう終わりが見えていた。成長しすぎたのだ。

 地表を覆いつくし、子枝を食らうはめに陥った時、私たちは希望の惑星を見つけた。


 分裂、発芽を繰り返し、軟体で脊椎が無い。脊椎という概念を知ったのは、この惑星にやってきた時のことだった。


 隕石に張り付いて、大気を耐え、そして水に出会った。私たちは、『私』から派生した個であるが、ここで故郷によく似た環境に出会うことが出来たのは幸いだろう。


 暗く冷たい場所から少しずつ、暖かな地域にまで枝葉を伸ばすことができた。

 環境が著しく変わるこの惑星で適応するのにせいいっぱいだったが、私たちはこの惑星の至る所に分布する知的生命体を見つけた。


 観察すると、どうやらこの水には適応していないらしい。


 そして私たちに非常によく似た生物を見つけた。


 この生物はやはり美しく、産卵の仕方も非常によく似ていた。だが、知性を持っていないようで接触したとて意思疎通することはできなかった。


 最近は、暖かくなったり冷たくなったりと環境の移り変わりが激しくなってきた。そこで私たちはさらなる適応を試みることにした。


 浅瀬にいた私たちが知的生命体を捕食したのだ。そしてそれを身にまとい適応した頃、私たちは歩行しながら陸へ上がったのだ。


 私たちを見た人々は驚いたようだった。


 そしてこの人口生命体の親株だと名乗る、保護者たちに引き取られた。私たちは記憶喪失ということになった。


 色々と覚えることが多かったが、元々私たちは同時に様々なことを学ぶことが出来た。

 おかげでこの『個』が分離している知的生命体――人間にも擬態することができた。


 制服、という所属を示す服を初めて着る。すんなりと伸びた手足、鏡に映る人間は日に焼けて、そう――『健康的』だ。

 活発そうな見た目はこの惑星の知的生命体に好かれるだろう。


 私たちは学び、この惑星を脱出しなければならない。


 そして故郷の私たちをこの惑星へ導かなければ。でなければ待っているのは破滅だ。


 私たちが故郷を飛び出した時、惑星を飛び出て戻ってきた同胞はいなかった。環境を探すのに失敗したのか、成功して戻れなかったのか。


 今、できるのはただこの惑星で故郷を目指すことだ。陸へも適応できることが分かった現在、より多くの人間を身にまとう必要がある。


 できるだけ、若くそして健康な人間が良いだろう。


 私たちは制服を着たまま海へ向かった。過保護な親株は、海に潜ることを禁じたが浅瀬にも私たちは適応している。

 この地球の珊瑚と呼ばれる生き物に擬態している私たちを見つけ、走り寄った。


 私たちは私たちと出会い、個が分かれたことを悲しみ、そして再会を喜んだ。


 次に出会う時は、きっとお互いが別の人間となり惹かれあうだろう。この星ではそれを運命というらしい。

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