緻密に描写された独自の世界観とストーリーの王道ファンタジー

難攻不落の城塞。美しい月の情景も相まって、悪行を尽くす領主の、身も心も醜い描写が際立つ冒頭です。奴隷売買ですか……配下からみじんも信頼されていないのに、なまじ悪知恵だけは働くというのが嫌ですね。

そんなヴェイリーンのすむカルネディオ城が、突然の爆破! なんだなんだ、正義の味方か!? と思いきや、奴隷の方まで巻き添えを食らってしまっているので、目的達成のための無差別攻撃だったのですね……正義の味方ではなかったようです。インパクト抜群のファーストシーンでした。

カルネディオ城消失のしらせはまたたく間に駆け巡り、さまざまなところで、さまざまな人々が奔走します。気さくな賢者様に、じゃじゃ馬な王女様。怪しい香りしかしない黒エルフ……

あえてだれかを主人公として置かないことにより、場面転換のたび、それぞれの場面の登場人物が主体となることができる。そうした点はなるほど、外画を観ているような感覚に近いですね。

硬派な文体ですが、一文一文の短さ、言葉のチョイスが的確かつ秀逸で、とても読みやすいです。単語も居心地がよさそうですね。筆力の高さがうかがえます。

さらっと10話まで拝見しましたが、ウーリッヒが肉体を乗っ取られたり、まさかの展開の連続です。魔霊鬼……おそろしい敵の登場ですね。

企画にご参加ありがとうございました! 今後もゆっくりですが、拝読させていただきます!

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