彼は殉教者たらんとするのか

第二部第90話まで拝読した時点でのレビューです。

魔女を駆逐する使命を帯びた審問官になった少年アルヴィン。
首切りなどと渾名されるやり手の上級審問官ベラナに師事するものの、ベラナはある条件を課して彼を試す。
だが、これは全ての苦難の始まりに過ぎなかった。
教会内部の派閥争いに巻き込まれたかと思えば、その時々に出会った仲間たちと多くの困難をはねのける。
そんな彼がやがて待ち受けていた試練は、実に残酷で想像を遥かに超えるものだった。

テンポよく、しかし浮薄ではない絶妙な文章で、次々と主人公或いはその仲間たちに襲い来る試練を描いた本作。
それは読者を飽きさせることなく、審問官、処刑人、枢機卿、或いは魔女の世界へと引きずり込み、気付けば、終わることがない夜の世界に閉じ込められていることでしょう。
そして主人公のアルヴィンが、優秀でありながら、驕ることなく頼るべきを頼り、何度も絶体絶命のピンチに陥りながらも前に進む姿に、或いは彼の仲間たちに、きっと心を動かされるはずです。それぞれに見せ場があり、意志があり、矜持があるから。
完結までもう少しとのことですが、このアルヴィンとクリスティーはきっと……、いや私の予想をここで開陳するなど野暮というもの。

己が課した使命の果てに、彼に待ち受ける運命はなんなのか。
是が非でも、完結まで見届けたい。

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