砂漠で謎という“潤い”を求めて繰り広げられるブロマンスに魅せられる…!

 あらすじなどは本作のものや他のレビューにしっかりと書かれているので、そちらを参考にしてください。

 三人称でテンポよく進む物語。1つ1つの描写が丁寧で精緻に描かれており、本作の熱く乾いた砂の舞う空気感──砂漠を存分に味わうことができます。ただの日常描写をとっても日本とは違ったオリエンタルな異国情緒が常に感じられる。私にとっての目新しさもあって、すいすいと読み進めることができました。

 そんなオリジナリティのある乾いた異国の雰囲気もさることながら、本作の魅力はやっぱりキャラクターたち。
 主要となる3人は揃いも揃って美男。オタクだったり、大食いだったり、天然マイペースだったり…。それぞれの性格に一癖も二癖もあって、キャラ立ちしている。また、そうした“属性”だけに頼るのでなくそれぞれの過去や秘密も工夫されていて、人間的な厚みがある。おかげで1人の人物としてそこに居ました。
 そうして、個性があり、価値観の違いがあるがゆえに、ただの会話にも深みがあって、面白い。考え方の違う3人の小気味よいやり取りもまた、本作の魅力でしょう。

 しかし、そんな彼らもやるべきときはやるんですよね。戦闘では各々の持てる力を持ってして敵を討ち倒して行く。先に上げた丁寧な描写のおかげで情景がありありと浮かび、時に熱く、時に涼しさすら感じるような、正しくファンタジー溢れる戦闘シーンも本作の見所です。普段はバラバラな3人がこの時はきちんとまとまる。その格好良さにグッと・キュンとくること間違いなしです。

 こうした点は、いわゆるキャラクター文芸と呼ばれるものに近しいものでしょうか。本作の場合はそこに「水の蜂というミステリアスな種族の謎を追う」という太い背骨と描写という肉があって物語性がある。気づけば引き込まれている世界観でもあるため、感動的なシーンもよく映えていた印象でした。

 行く先々で待ち受ける、新たな出会いと騒動。ともに行くのは頼れる仲間と、手触り極上のモフモフ生物。頬を叩く砂の風と乾いた熱気に当てられながら探すのは水の蜂の謎。知的好奇心を追い求めるという意味でもその構図はなんだか、“潤い”や“オアシス”を求める旅路のようで砂漠という世界観にピッタリでした。

 タグにもあるように、ある種少年漫画のような読みやすさと共に描かれる、3人の美青年+1体のモフモフが行く砂漠の旅。イケメンたちのブロマンスが好きな方はもちろん、オリジナリティであったり、地に足付いた世界観を求める方にもオススメしたい。描写とキャラが際立った、魅力あふれる作品です!

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