最悪な出来事が起きた。それをきっかけに、男はより最悪へと沈んでいく。

バチェラーパーティーの主役であった先輩が高熱を出した。きっかけはそんなことだ。
飲み会がなくなり、早めに帰宅したシンイチが見たものは婚約者の浮気現場だった。絶望したまま友人と合流、二人でナンパした女子大生は非合法な薬物を持っている。正義感からその薬物を奪い、夜の街をさまようシンイチは自分の置かれた状況がより悪くなったことに気づくものの……。
最悪からさらなる最悪に落ちていくシンイチ。やがて、シンイチは自分でも考えないようにしていた最悪な過去に向き合う羽目に。

純文学的な文章表現でありながら、読みやすく明快な作者の筆力により、読者はシンイチに起きた現実に引き込まれていく。周囲の人々の心情も詳細に描かれ、その絶望的な状況がほんの少しのボタンの掛け違いで起きたことを実感するだろう。
ホラーでありミステリーでもあり、純粋なエネルギーに満ちた恐怖の階段。読むものを真っ逆さまに落としていくこの物語は是非体感してほしい。