概要
蝉の鳴き声がその横顔を縁取る──炭酸が、弾ける。
再テストさえ合格すれば終われる補習で、荒牧は最後の一人まで残っていた。ようやく帰ろうとした渡り廊下、ふと学校に響く“夏休みの音”へ耳を傾ける。
──ペタリ、ペタリ。そこに迷い込んでくる足音。
「なんで荒牧がいんの?」
顔を上げた時には、先ほどまで聞こえていたものが嘘みたいに消え、彼女の声だけが荒牧の胸に届いていた。
この場所で過ごす最後の夏。炭酸が今、走り出す。
──ペタリ、ペタリ。そこに迷い込んでくる足音。
「なんで荒牧がいんの?」
顔を上げた時には、先ほどまで聞こえていたものが嘘みたいに消え、彼女の声だけが荒牧の胸に届いていた。
この場所で過ごす最後の夏。炭酸が今、走り出す。