あとがき
ということで、『竜虎、東アジアを駆ける』完結となりました。
ひょっとすると、「えっ、このタイミングで?」と思われた方もいるかもしれませんが、ここから先がとてつもなく難易度が高いのです。
まず、南京攻略戦までは実際の資料があるので(時期が早まったので、そのままというわけにはいきませんでしたが)、誰がどこにいるかというのが分かるのですが、華北となりますと誰がどこにいるのかが分からない。
というより、そもそも清にあとどのくらいの人物がいたのかすら分かりません。『清史稿』の情報にしても膨大ですし、ちょっと手に負えないものがあります。
更に世界史に突っ込むのも大変なんですよね。
この話では欧州についても触れていましたが、更に続けるとなると欧州史の動向まで含めてかなり真面目に考えないといけなくなります。ちょうど欧州では三十年戦争が終わり、英蘭戦争が始まる頃ですが、これがどう変更するのかも考えないといけない。
さすがにそれはちょっと厳しいかなということで、南京落としたら終わりにするしかないかなと。
元々は、『戦国終わらず』の後、特に何かやろうと思っていなかったのですが、戦国で丸橋忠弥を長宗我部盛親の落胤という設定にしていた時に「由井正雪は出るのでしょうか?」という話があったのと、鄭成功の話を見たりしていて、何の気なく「時代同じだし、ちょっとやってみようか」という気になりました。戦国で松平信綱が出ていたので、ある程度の背景が分かっていたということもありましたので。
由井正雪と鄭成功については、陳舜臣先生やその他も考えたりしていたのですが、個人的にはそこにシャクシャインも関与させたのはヒットでした。といっても、最初そこまで考えていたわけではなく、「南海貿易が出てくるけれど、北も入れてみようか。あれ、シャクシャイン、正雪と生まれた年ほぼ同じなの?」と偶々知ったというところだったのですが。
全体を通じてみると、世界史と日本史の繋がり的な形で、なるべく広く見るということはできたのかなとは思います。オランダ東インド会社や台湾の状況も含めて、色々知ることができましたし、ほとんど知られていない北京陥落後の明についても知ることができました。世界史の教科書より深めの教材的な感じにはなったのかなと思います。
反面、史実解説に話が行きすぎてしまって、個々人のキャラが曖昧だった感じが反省点となりますかね。
結果論ですけれど、鄭成功は施琅をぶっ殺すくらいのどうしようもないキャラぶりにしてしまった方が良かったかもしれません。最初の段階では「鄭成功の大失敗は施琅の家族殺して、清に走らせてしまったことだ」と思っていましたので、それはできなかったですが、淡白な人が増えすぎたきらいはありました。
まあ、淡白な人が増えたのは、同時並行の別の話にアクの強い人がいたこともあったかもしれませんが(苦笑
今後、修正するなら、その点になりますかね。
前話からの方も含めて、今回もかなり多くの方に読んでいただき、支援の言葉もいただきました。
最後になりましたが、改めて感謝申し上げます。
令和四年六月 川野遥拝
龍虎、東アジアを駆ける 川野遥 @kawanohate
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