第1話:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/2912051597468240238
第2話:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/2912051598026466545
第3話:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/2912051599241003595
第4話:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/2912051600460892726
それから数年が経過した。
「……というようなことを聞かされた次第です」
アルエル・クラーミア宮殿の廊下でアタマナ・ハワタサがルヴィナ・ヴィルシュハーゼに自分が果たした課題の詳細について説明している。
「……概ね同感。親子の関係性も何となく分かる。理解」
相変わらずの無表情な様子でルヴィナは頷いている。
「その後、実際に魚釣りをしてみたのですが、結構沢山釣れました。摂政殿は本当に釣りが下手だったようです」
「……人には得手、不得手がある。私も音楽は得意。他は苦手」
「その後も運命的な出会いがあったのです。沖合の方から……」
「あっと」
話を続けようとしていたところだが、ちょうどエリーティアが廊下を歩いてきていた。
書類を持っているので、誰かしら……恐らくレミリアかセルフェイと何か相談するつもりのようだ。
「エリーティア様。ちょうど摂政殿の話を」
ルヴィナがそう声をかける。
かけられたエリーティアはチラリと視線を向けたが。
何も言わずに横をすっと通り過ぎていった。
「……」
ルヴィナの死んだ魚のような目が更に濁った色合いを帯びる。
険しい視線をアタマナに向けた。
「アタマナ。おまえ、その時。エリーティア様に。何を言った?」
「何を言った?」
「エリーティア様は露骨に避けた。触れられたくないと思った。そう思う理由。おまえの余計な言動。それ以外にありえない」
「そんなこと余計なことは言っていませんよ。あ、でも、当時、『では、お二人はその時に兄王陛下を仕込まれたのでしょうねぇ。エリーティア様はいつなのでしょうか』みたいなことは言いましたけれど」
「……」
ルヴィナは無言で右足を振り上げ、アタマナの左足を払うように蹴る。
「痛い!」
もう一回、今度はふくらはぎのあたりを蹴る。
「痛いです! 蹴らないでください! ……って、ルヴィナ様、滅茶苦茶怒っていません!?」
「……私は怒っていない。私におまえを蹴る気はない。これは世界の良心の現れ。世界の良心が私の右足を動かす。アタマナを蹴飛ばせ。そう動かしている」
「そんなはずないですよ! あ、痛い! 痛いですって!」
「おまえだけが痛いのではない。私も痛い。こんな馬鹿を連れていた。己の愚かさ。それを改めて痛感。おまえが流す涙の三倍。私は血の涙を流している」
「ブツブツ言いながら無表情に足だけガシガシ上げるのをやめてくださいよ! ひぇ~」
「逃げるな!」
走って逃げだしたアタマナを、ルヴィナが追いかける。
一度横を過ぎ去ったエリーティアの更に横を、2人が駆けていく。
エリーティアはそれもチラリと見たものの、特に何もすることなく、廊下の中央を進む。
エリーティアが小柄な少年を見つけて声をかけた。
「あ、セルフェイ、ちょっといい?」
「何ですか……っと」
振り返るセルフェイの少し横をまた暴風のように2人が走り去る。どこかでUターンして戻ってきたようだ。
「待てと言っている!」
「待ったら蹴られまくるじゃないですか!」
「当然!」
後ろから悲鳴と追呼の声が続いている。
「……何をやっているんですか? あの2人……?」
セルフェイがけげんな視線を、駆け抜けていった2人の方に向けた。
「さぁ……。いつものじゃれ合いなんじゃないかと思うけど?」
エリーティアはややわざとらしく、小首を傾げた。