タイトルどおり妻が強すぎるミステリの連作短編

『探偵の妻が強すぎる ―探偵 我妻強の随想録―』

 このタイトルのとおりの連作短編ミステリです。

 本作の主人公――というか語り手は、千葉市内で興信所を営む我妻強。そして、彼の妻である優。この夫婦と仲間たちで持ちこまれた事件の謎を解いてゆきます。

 もっとも、そうしたミステリ的な部分のみならず、強と優の会話を読んでいるだけでも楽しいのが本作です。

 優は夫に対して常に強気に接しているのものの、そのやり取りは夫婦漫才のようです。他の登場人物たちも個性的で魅力的。そのため、本作をキャラクター小説として楽しむことも可能でしょう。

 Case4ではそうした登場人物たちの過去がとある事件を通じて描かれており、それを知ることで、各人物たちにこれまでよりも感情移入できるようになっています。

 とは言っても、やはりこの作品の中心軸にあるのはミステリなのだと思います。
 たとえば本作の取りを務めるCase5。こちらでは、ハラハラドキドキするようなサスペンスと、予想外の結末が連続する構成になっています。ミステリとしての底力を見せつけられた思いでした。

 そんな本作ですが、なんだかんだでハッピーな空気で満たされているところも大きな魅力のひとつでしょう。
『探偵の妻が強すぎる ―探偵 我妻強の随想録―』、おすすめです!

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