そのセールスマンは、ふいにあなたのそばに立っている


 ふいに現れる若い男。ビジネス・リュックを背負った自称セールスマン、大黒招吉。
 いかにも使えなさそうなくせに、神出鬼没。そして、謎の商品をあなたに勧めてくる。

 本作は連作短編の形式で、章ごとに主人公が変わります。そして彼らは、謎のセールスマン大黒と出会い、彼から不思議な道具を勧められるのです。

 ちょっと不思議で、ブラック・ユーモア要素のある物語。
 手放しで喜べる楽しい話ではないですし、文体も、WEB小説というより一般書籍の如し。内容も大人向けです。

 グリム童話が案外残酷であるのに似て、この大人向け童話も残酷でありブラックであり、そして苦みがあります。甘くない飲み物を楽しめるようになった大人向けの小説。

 ホラージャンルではありますが、恐怖を売りにはしていません。
 が、読み込めば、その恐ろしさは十分に伝わるはず。人の内面の恐ろしさが、ここには描かれています。

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