第589話 明かす

 そして、改めて蜥蜴人族たちも交えた会議に戻る。

 と言っても、基本的にはこっちで相談して決めたことを伝えていくのが主だ。

 さっきから相談をリードしてくれていた冒険者がその辺りは全部ザルブ将軍に伝えてくれた。

 これに将軍は深く頷いて言う。


「うむ、委細承知した。では具体的なルートについての説明をしよう……また、軍の行動タイミングなどもな」

  

 そして地図を交えた説明をしてくれた。

 基本的には最初にしてくれた内容と同じだな。

 軍で多くの《虫の魔物》たちを引き付け、その間に俺たちが秘密裏に通り抜けて《虫の魔物》たちの領域に向かう。

 そして合流次第、出来るだけ見つかりにくいルートで戻ってくる、と。

 十人以上でグループを作ってしまうと位置がバレやすいから、それ以下の人数になるように調整しながら、少しずつ戻るという感じになるだろう。

 そんな話だ。

 そして、ザルブ将軍が、


「……ということだ。他に何かあるだろうか?」


 と周囲を見回して言ってくる。

 ここで、雹菜が俺に視線を合わせた。

 これは合図というか、例のことを言うのなら今だろう、と言うことだ。

 俺は頷いて挙手する。

 ここで全てを……とまでは言わないが、俺にとって重要な秘密を公開するためだ。

 ワスプのしてくれた話も含めてな。

 ザルブ将軍が俺に視線を合わせて言う。


「では、そこの救世主殿……」


「天沢創です。実は、かなり重要なことを皆さんにお伝えしなければいけなくて、このタイミングでのご相談になりました」


「重要なこととは?」


「《虫の魔物》たちについての詳細と、彼らを最終的に倒すために必要なものについてです」


 これにガタッ、と動揺したように蜥蜴人族たちが動く。

 これは、そんな方法があるのか、と言う驚きだな。

 別に何か後ろ暗いところがあるとかではない。

 

「それは……一体」


「まず、聞いて欲しいのが、ワスプ……私が契約した《蟲族》から教えてもらった情報についてです……」


 そして俺は、ワスプから聞いた話をしていった。

 多少の取捨選択はしたが、ほぼ全てだな。

 《オリジン》についても、重要性を理解してもらうためには隠し立てすることは少ない方がいい。

 だから仕方なかった。

 これを蜥蜴人族たちは神妙そうな表情で聞いていた。

 冒険者たちはざわついていた。

 そんなものがあるということなど、全く知らなかったことを考えれば当然だろう。

 そして俺に対して心配気な表情もしていた。

 そんなことを話してしまっていいのか、アドバンテージがなくなってしまうのに、みたいな感じだな。

 いい人たちだ。

 だが、俺が秘密を抱えて人類が滅びに向かってしまうのはまずい。

 それを考えれば、もうここで明かすしかないのだ。

 逆に言えば、明かしてしまった方が安全とも言える。

 あとあと、選ばれた数人だけが知っている、みたいな感じになると逆に危険だからな。

 みんなが知っていれば、俺はある種、人類の共有すべき武器だ。

 下手な行動を起こすことは難しいだろう、と思った。

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スキルなしの最弱現代冒険者は、魔力操作の真の意味を理解して最強冒険者への道を歩む 湖水 鏡月 @murou

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