おわりに
ここまでこのエッセイに付き合ってくださった方の中にはもういないかもしれませんが、一般人の中には「仮に子を産まない選択が正しいとしても、全員がそれを実践したら人間が絶滅するだろう? そこのところどうなんだ」という極めて倫理的な発言をされる方もいらっしゃるかと思います。
私からの答えは「絶滅すればいい」です。
先の話で説明した通り、地球における有機物の立ち位置は不自然なのです。
そして、私のような考えを持つ個体も、人類という全体から見ると不自然な異物。消えてもらいたい存在です。だから、DNAを残さないという手法によって消えるのです。私の行動は人類全体が望む未来を一切阻害していない。寧ろ私のような人間が子を何人も残したら反乱分子が増えるだけです。それは人類にとってマイナスでしょう。
人間の今の社会体系や体の作りや脳の作りは、完璧なものと呼べるでしょうか? 答えは否です。だって生まれてこの方一度も不幸や苦悩を味わったことがないという人はいないでしょう? 完璧な生物なら、一度も不幸や苦悩を味わうことなく生きていける。進化の仕方を間違えたんですよ。なにをそれほど今の人間の状態に固執する必要性があるのでしょうか。
仮に絶滅したとしても、何千年何億年後かにはまた新しい人類が誕生しています。そのときは今よりも完璧に近い種になっているかもしれません。
例えば、経済状況に幸不幸を左右されない社会体系。
例えば、男性でも女性でも妊娠できる平等なフォルム。
例えば、老いることも死ぬこともない完璧なる肉体構造。
例えば、無機物と融合した、無機であり有機でもある属性。
これらのことが起こり得る可能性の否定はできません。神の不在証明と同様に。
今の社会が、通念が、体系が、理念が、進化が絶対に正しいという確証はない。ゆえに、生き残らなければいけない確証もない。
大局を見るなら、さっさと全滅した方が良い可能性だってある。
今ある価値観は、常識は、正解は今の人類が作り出したものなのだから、今の人類にとって都合の良い改竄がされているのは当然です。別に改竄されていること自体は問題ない。問題なのは、その改竄に気付かないことや、目を向けないこと。
私が小説を書くことでずっと示してきたテーマは『世界を疑え』です。
私はなにもみなさんに世界を壊してほしいとも思わないし、一緒になって旗を振ってほしいとも思わない。共感も同調もいらない。ただ疑ってくれさえすればいい。ほんの一瞬だけでも。世界を。
さて。
これらが私が子を授かりたくない4つの理由となります。生活、精神、道徳、地球の視点からお送りしました。納得や理解は求めませんが、なんとなく「ああ、そんなにも嫌なんだな。だったら勧めないでおこう」と思って頂けたら幸いです。
私の偏った私論は持ち帰らず、どうかここに置いて行ってください。
俗世を生きるにはあまりに邪魔な考え方でしょうから。
ご清聴、ありがとうございました。
私が子を授かりたくない4つの理由 詩一 @serch
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
書くよ無/詩一
★137 エッセイ・ノンフィクション 連載中 50話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます