マリンノーツ（第３話）「岬にて」

　2060年8月　国際連邦艦隊所属の多目的大洋間航行用潜水艦「ポセイドン」の今回の任務は、インドのムンバイにあるトリウム原子力発電所で発生したトラブルへの救援であった。

　「ポセイドン」の主機は原子力であるが、タイプは加圧水型軽水炉であるため、トリウム原子炉に対する知見は「ポセイドン」の機関部員にはほとんどなかった。

「ポセイドン」の機関部長を中心とした乗組員は、不本意ながらも発電所職員と協力して、原子力発電所の仮復旧作業に当たった。

　神の存在より科学を信奉する機関部長は、発電所職員やムンバイ市民と交流、仮復旧作業の中で互いに異性を意識する感情が生まれ、復旧作業が終わって任務を終了する頃には機関部長に新たな心境が生まれていた。