命の煌めき

千年の時を生きるハイエルフに転生した主人公は、どうやら他のエルフとは価値観が違うようで…。美しくも退屈な深い森を抜け、未知なる世界に足を踏み出した主人公の千年を描く。


この物語の主人公は、優しくて気ままで、それでいて少し頑固だ。旅を続け、出会いと別れを繰り返す。寿命の違いから永遠の別れとなることもしばしばだ。
悲しみはある。されど苦しみは少ない。共に過ごした時間の大切さを、彼はしっているから。

悠久の時を丁寧に描きつつも、対照的に一層鮮やかに引き立つのは、短い人生を懸命に生きる命の煌めきだ。
別れは幾度繰り返しても悲しいし、寂しい。それでも、人と関わることをやめない。
誰かと一緒にいること、共に歩むこと、愛すること。その美しさを、決して直接的な表現はせず、ささやかに楓を揺らす小さな風のような軽やかさで、そっと心に運んでくれる。
きっと読者の心も、秋風のように優しく揺らしてくれる素敵な小説です。ぜひ一読を。

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