この主人公を愛さずにはいられない。

この物語の主人公はダメ人間である。
守銭奴ロドリックなどと呼ばれ、他の冒険者には忌み嫌われ、女にはだらしがなく、それでいて中途半端に強い。そんな主人公だ。

およそ主人公らしい特性は持ち合わせて居ないように思えるこの男だが、一つ主人公らしい点があるとすれば、読者がこの主人公を愛せずにはいられない、そんな魅力を持っている点である。
軽快な一人称で語られるこの物語には思わずクスリとさせられる場面も多く、ダメ人間とわかっていても愛さずにはいられない。
そんな愛すべき主人公だが、何故か、めちゃくちゃかっこいい。

絶対絶命。命の灯火が今にも尽きようとしている時、不思議とロドリックならなんとかしてくれるのではないかと。
頼む、なんとかしてくれと。
このろくでもない主人公に願ってしまうのだ。

そしてこの主人公は、願った通りにその苦難に立ち向かっていく。
そこにこの主人公の不思議な魅力の根幹がある。
キャラクターに魅力がある小説は何度でも読み返せる。かくいう私も、何度も読み返した。

設定も非常に凝っていて面白く、情景描写も秀逸だ。暗い迷宮の中には、いつも死の気配が横たわる。
そんな迷宮の奥に隠された秘密とは何か。迷宮で出会った謎の少女。不可解な記憶の欠落。
一度読み始めれば、続きを読まずにはいられない魅力がこの物語にはある。

だから皆んなにぜひ読んでみてほしい。きっと後悔はしまい。

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