ある迷宮探索者の栄光と苦難

ぽんぽん

第1部

シルフと女

第1話 手紙

 親愛なるシアへ――

 

拝啓

 長い冬も終わり、残雪の変わりに花筵が通りを彩る季節になってしまいましたが、そちらはどうお過ごしでしょうか。

 私の方はだいぶ生活にも慣れてきて、最近じゃ仕事の合間に、趣味を楽しむ余裕すらできたほどです。稼ぎのほうもまずまずで、年が明ける頃には目標額を達成して、そちらに帰ることができるかもしれません。

 仕事仲間のニーナとダルムントは相変わらず元気です。もちろんチュタも。

 アイラは男を作って田舎へ帰ってしまいました。なので当面は3人で仕事を続けていくことになりますが、貴方との約束どおり、無理はしませんので御心配なく。

 自宅の件に関しては、こちらとしては異論ありません。そのまま進めてくださって結構です。貴方のことだからきっと、素晴らしい部屋になると期待しております。また帰る楽しみが一つ増えてしまいました。今から新年が待ち遠しいです。

 それでは、会える日を楽しみに、明日も仕事に励んでまいります。また、手紙書きます。


 王国暦489年 4月8日 ――貴方の騎士、リックより



追伸

 そういえば昨日、迷宮の第三層あたりで探索者を一人救出しました。まだ意識が戻っていないので何とも言えませんが、もしかするとやんごとなき身分の方かもしれません。救助手当てがいくら支払われるのか今から楽しみでなりません。(場合によってはすぐにでも貴方の元へ帰れるかも!)幸運を祈っていてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る