主人公のまりんが冒頭で殺されてしまい、十年後に目覚め、異能を獲得する展開がとてもスムーズで楽しかったです。
まりんは記憶が抜け落ちているようで、父の言葉も思い出せません。
また何故異能を獲得したのかという理由も分からないようになっています。
そういった謎の魅力がこの作品を輝かせています。
ミステリではありませんが、謎はあらゆる物語に適応できるので便利です。
そういった物語の構造も面白い。
凍った世界で炎の異能が手に入るというのも、世界との対立を明確にしていて、テーマをはっきりとさせています。
また、かつてまりんが救ったのと同じ火傷の痕を持つミリルの超然とした佇まいがさらなる魅力を醸し出しています。
ジャンルとしてはファンタジーだと思いますが様々な人に薦められる物語だと思いました。
ぜひ読んでみてください。
冒頭からぐぐっと引き込まれ、最後まで一気に拝読。
ディストピアと化した世界。なのに一枚岩ではない国連軍、救済ボランティアと言う名のレジスタンス的勢力、米国の兵器会社、そして主人公を含む異能を持ったキャラクター……すべての世界観の構成が巧みに構成されていて、またそれが最後の仕掛けにもなっており、とても素晴らしかったです。
誰が敵か、誰が味方か、初めから終わりまで分からなくてハラハラしました。
また、主人公の能力の秘密や、敵方として登場した人物・カルジの正体などが終盤まで伏せられており、「ここぞ」と言うところで明らかに!
バトルシーンなども胸熱の展開で、濃いハリウッド映画を見た時のような充実感がありました。
文字でも迫力十分ですが、アニメやCGを使った実写など、映像で見たい作品でもあります。
拝読させていただきありがとうございました。
この度は私の「読みます」企画に素敵な作品をご紹介頂き、本当にありがとうございました。
ただ、私はSFモノが苦手であまり読んだことがありませんでした。なので満足して頂けるような感想が書けていないかもしれません。ご理解下さい。
豊富な語彙力で読みやすく短い文章で綴られているのに、状況、状態、登場人物の心情などのほぼ全ての事柄が「完璧に理解できる」ように描写されていることに驚かされました。SFモノが苦手だと言うことを忘れて読み進めてしまう程の力を持つ作品でした。ストーリーも先が気になるので結局最後まで読んでしまいました!読者のことをきちんと意識されていて丁寧に描かれていると感じました。良く知っている現実の世界が舞台となっているので、現実に起こっているかのようにリアルに感じ、作品に入り込んでしまいました。主人公の東郷まりんの性格が良い意味で普通の女の子なので感情移入しやすかったです。登場人物全てにしっかりとした個性と背景があり「何故そうなったのか」「何故そのような行動をとるのか」と言う説明もぼかされる事なく読者に理解できるよう後々明かされたりするので先を読まずにはいられなくなりました。SFモノにあまり触れてこなかった自分でも、描かれている世界観を映画のように映像で頭の中に思い浮かべて楽しむ事ができる作品でした。求めていた恋愛モノとは違いますが読むことが出来て良かったと思わせてくれる作品でした!謎だった部分も全て回収のし忘れなど一切なくてスッキリとした気持ちで読み終える事が出来ました。私にSFモノも面白いのだと言うことを教えて下さる作品となりました。残酷な場面の描写が余計な比喩や余分な一文など一切なくて、個人的にとても好みでした!!
困窮し、人々の欲望が表出し始めた世界。
記憶が曖昧な状態で目覚めた主人公・まりんは欲望に満ちた男たち、そして、暴走する兵器会社の人々に追われる。
そんな中、男の子と出会い、彼を守ろうと努力するも、殺されてしまう。彼を守れなかった無力感、そんな自分に怒りを覚える彼女がもう一度目を覚ますと、そこは雪が降り積もる一面の銀世界。
そして、現れたのは巨大な怪物。
主人公の怒りに呼応するように現れる不思議な炎。そして、助けにきた人々の中にいた女性・ミリルには、あの時助けられなかった男の子と同じようなあざがあって…。
精緻な文体は荒廃した世界にとてもよく合っていて、没入感がある。そのため、主人公含め、その世界で生きている人々の輪郭をはっきりと脳内に描かせてくれます。
加えて、主人公の記憶が曖昧であることが読者である私とも合致し、SFならではの退廃的な世界観に入り込んだような感覚を加速させてくれます。
3章(5話読了時点)で「期待度」としてこのレビューを書いていますが、主人公の炎の秘密、“良い人”で終わらないミリル、そもそもどうしてこんな世界になってしまったのか…。
まりんの“約束”としてよく出てくる父の存在も忘れてはいけませんね。どうしてまりんがその約束にこだわるのか、その過去は…?
多くの謎が残るのですが、私の中でそれがきちんと「期待感」になっているのは、作者様の実力を文体から感じ取っているからでしょう。つまり、必ずそこに理由がある、と感じさせてくれているわけです。
ネット小説にしては1話毎が長い方ですが、退屈を覚えることも、集中力が途切れることもありませんでした。そのことからも、特に文章力の高さが伺えました。
まりんやミリルの不思議な能力、世界の秘密などを、主人公と一緒の目線で解明していく。
圧倒的没入感と、それに伴う一体感を感じられる、SFならではの、硬派で素敵な作品。今後に期待です!
寒冷化が進む地球で治安が悪化し、殺されたはずの主人公『東郷まりん』は、10年後の凍て付いた東京で目を覚ます。そこで目にしたのは炎を噴き出す自身の異能、魅力的な美女、そして東京を跋扈する巨大な怪物達……。何もかもが変化した終末世界で、まりんは父の姿を追い求めて生きていく――。
冒頭から主人公の死亡という強烈なシーンで始まり、目覚めた後の世界や状況においても謎が多く、オチが気になって最後まで一気に読み進めてしまいました。
作者さんも自らアピールポイントにしている確かな文章力によって、困惑したり読みにくさを感じることなく、ラストまでスラスラ読み切れた部分は素晴らしいの一言です。
謎の怪物『キャンサー』や異能者同士でのバトルシーンにおいても、その高い実力は遺憾無く発揮されています。迫力満点でありながらスピード感のある描写によって、終始ワクワクしながら楽しむことができました。
更に、過酷な状況の中でも逞しさや優しさを失わないまりんや、単なる『主人公に寄り添う優しいお姉さん』で終わらないミリルなどなど、魅力的なキャラクター達の個性も強く印象に残ります。
エピローグでは全ての謎が解明され、爽やかさや『温かさ』があり、総合的に高水準な技術でまとまっている良作だと思いました。
ただ、内容的には文句ナシなのですが、タイトルに『旅をする』とあったのに、あんまり旅要素を感じられないのだけは残念でした。
氷の東京から始まりの地・北海道を目指し、交通機関も死んでいるので寒さに凍えつつ歩き、まりんの炎で温まったり道中に出現するキャンサー達を倒しながら北上するのかな……。と予想や期待をしていたのですが、航空機で三時間で到着したので「旅とは……?」と正直思ってしまいました。もっとロードムービー的な内容かと思っていましたが、割りとバトルがメインでした。
しかしまりんが目覚めてからエンディングまでの一連の戦いが『旅』である、という意味ならば、タイトル的には間違っていないのでしょう。
それと、あらすじの最初に「プロお墨付きの文章です!」と表記するのは、個人的にはあまりオススメしません。
他の作品でもアピールしていて、確かに文章は非常に上手だと思います。プロの方々から評価されたのなら、それは間違いなく素晴らしいことです。今後も自信を持って執筆する原動力にして頂きたいです。
ですがそれは、読者へのアピールポイントには大してなりません。読者は上手い文章を読みに来ているのではなく、魅力的なキャラの活躍や心躍るストーリーを期待しているのですから。コレは私も編集者から言われた指摘です。
小説における文章力というのは、料理人にとっての包丁捌きや焼き加減のテクニックみたいなものです。ですがお客様にアピールすべきなのは調理スキルではなく、その技術によって作られた料理が美味しいか不味いか、が評価基準になるはずです。
ネガティブな読者だと「じゃあ文章以外はプロ級じゃないの?」と捉えてしまう危険性もあるので、文章力の高さはあまり前面には出さず、斬新な作品テーマや目新しい世界観、読者の目を引く設定や個性的なキャラ達、そして素晴らしいストーリーや構成力を押し出した方が良いのではないかと、個人的には思います。
そういった部分での実力も高い作者さんだと感じたので、文章力のみをアピールするのは勿体ないです。そう思えるほど、面白い作品でした。