受け取れなかった言葉。送れなかったメッセージ。

一万字の短編。使える文字数はそこまで多いわけではないのによくここまで展開を詰め込んだな、というのが正直な感想。
いらない描写を極端に削り切ったのか、それとも書くべきシーンだけを書いた結果こうなったのかはわからないが、素晴らしい才能だと思う。
また、本作はほぼ過去編で構成されているため、出てくる言葉や電子機器に少し懐かしさを感じることが出来る。電話の描写の際に「コム」という単語が出てきたが、残念ながら私には聞きなじみがなかった。だが、それだけ時間軸に従って描写されている。筆者のこだわりを感じた。
そして、本作の本題ともいえる大晦日のどんでん返し。きっとここを描写したくてこの作品を作ったのだろう。きちんと作品内で目立っていた。
死を絡めたどんでん返しを利用すると読了感をスッキリとさせるのが非常に難しくなるのだが、この作品はそこもきちんとカバーしている。
きっと劇中のキャラクターは彼の死をきちんと消化できたのだろう。そう思わせるシーンが用意してあった。
総じて、良かった。
最初にも述べたが、これを一万字にまとめた才能は褒めるしかない。素晴らしい。
こんなものだろうか。
それでは。

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