切なくてほろ苦い、けれど大切な思い出

大変、素敵な作品でした。

初恋という人生で初めて経験する感情の機微を、丁寧で主人公の等身大の言葉で表現されているな、と感じました。

作品タイトルと内容のリンクの構成は正直、何度か裏切られる展開でただただその構成力の高さに舌を巻くのみです。

1万字という制限の中で、登場人物たちの表情や感情がしっかりと映像で浮かんできそうな、情報と表現をまとめ上げる手腕は見事の一言です。

個人的には匂いの描写で主人公の気持ちのベクトルを表現している部分が好きです。

憧れと恋心、友情と恋愛、実際に経験してみるとそれらの判別はひどく曖昧で、体験しているその時には本当はそんなに分かっていないのかもしれません。そういうものに整理がつくのは、「その時」が遠く過ぎ去った後だったりしますよね。

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