30歳の男女三人の高校から、現在までのお話。
男女三人って、きれいな三角になんてなれないよね。女の子水野ちゃんは桐生くんに気があるのに、その友達の岡野くんに話を振って、桐生くんをつなぎとめてる。
よーくわかりますよ、水野ちゃんの気持ち。ちょっとずるいけど、自分によっぽど自信のある女の子以外、みんなこういう下心ってあるんじゃないかな、なんて感情移入しまくりで読み進めていきました。
交錯する三人の思いと時間軸、それがきれいまとめられていてとても読みやすかったです。読みやすくて、胸の中で広がっていくような作品でした。
あと、自分よりも少し上の世代の文化になりますが、その当時のお兄さんおねえさんのドラマでも見ているかのように、細かい設定がエモいです(MD、コム!)。楽しそうだったな、2005年前後の若者たちよ。
美しい情景描写と、切ない心理描写に、読後は胸が痛くなるほどの感情が込み上げてきました。
主人公である女性の一人称視点で紡がれる過去の初恋の物語。
叶わなかった、死んでしまった初恋だからこそ、こんなにも美しくて悲しいものなのでしょう。
それをこんなにも鮮烈に表現する文章力に感服いたしました。
特に好きなのは4話です。
終盤は思わずスマホをめちゃくちゃに握りしめていました。
学生故というか、若さ故の相手を少し蔑ろにしてしまうほどの恋情。
愚直なほど恋しい相手を想う気持ちに情緒がぐちゃぐちゃになります。
わかる〜〜お互い様なんだよね〜〜〜と思いながら読んでいました。
大人になって振り返ると、青くて、でもなんだか尊く思えてしまう感情だと思います。
5話終盤から最終話にかけての追い込みは「嘘でしょ…」と「ああ〜幸せにどうぞ〜!」という展開。
こういった構成、とても好きです。
ままならないからこそ、それを受け止めて生きていく女性は本当に美しいと思います。
素敵な作品をありがとうございました。
他の作品も読ませていただきたいと思います。
大変、素敵な作品でした。
初恋という人生で初めて経験する感情の機微を、丁寧で主人公の等身大の言葉で表現されているな、と感じました。
作品タイトルと内容のリンクの構成は正直、何度か裏切られる展開でただただその構成力の高さに舌を巻くのみです。
1万字という制限の中で、登場人物たちの表情や感情がしっかりと映像で浮かんできそうな、情報と表現をまとめ上げる手腕は見事の一言です。
個人的には匂いの描写で主人公の気持ちのベクトルを表現している部分が好きです。
憧れと恋心、友情と恋愛、実際に経験してみるとそれらの判別はひどく曖昧で、体験しているその時には本当はそんなに分かっていないのかもしれません。そういうものに整理がつくのは、「その時」が遠く過ぎ去った後だったりしますよね。