本作は基本的に一人称視点で構成されている。
大体の作品は三人称か一人称なのだから、『一人称で書いてある』こと自体には大して意味はない。
しかし、本作は一人称であるにも関わらず地の文に重厚感があるのだ。
ただ主人公の心情や行動を語るだけでなく、周囲の状況が分かりやすいように書かれている。
昨今のweb小説は、地の文を徹底的に減らし会話だけで作品が進行していくものばかりだったので、本作は非常に読んでいて気持ちが良かった。
また、設定をきちんと生かしているのも好印象だった。
昨今、なんとなく異世界に飛ばしたり、地球を破壊したりする作品が多い中、舞台に現実世界を選び、きちんと歴史的な背景も作中で汲んでいく。
良く練られた作品だった。
私は歴史の知識が薄いため、主人公の解説を聞いてようやく歴史的な意味に気付くことばかりだったが、知っている人には刺さる何かがあったことだろう。
しっかり腰を据えて作品を読みたい人には刺さる一作だと思う。
興味があればぜひ。
それでは。
本作では、悪名高きナチスが主人公マルコの怨敵として描かれています。それだけなら歴史を織り交ぜた単なる復讐譚に思えますが、本作は少し違う。前線に送り込まれた人造人間や、華麗に刀剣を操る人物が登場し、物語は一気にSFの風味を醸し出します。
そして、この物語のいいところはまだ終わりません。前述したナチスや、のちのち名前が出てくるあの人物の名前など、知っていると「あっ!」と驚かされるような仕掛けがたくさんあります。
もしかしたら、本当にこんなことがあったのかも……と思わせるような技巧が素晴らしいです。
SF好き、歴史好きはもちろん、ダークなファンタジー好きにもお勧めしたい作品です。