コーヒーと課長とわたし
KEI
第1話 最悪な一日の始まり
山本唯、27歳。
女性用服メーカーの企画部勤務して、今年で入社7年目。
とにかく毎日仕事が楽しくて、時々ミスをするが毎日充実した日々を過ごしている。
仕事が楽しいのと、忙しすぎるので恋愛とは無縁の毎日を送っている。
彼氏がいなくても友達にも同期にも恵まれて満足。
昨日も来シーズンの企画書の締め切り日だったので、終電まで仕事をしてボロボロの状態で帰宅する。
疲れすぎていたので、ご飯も食べず半分眠った状態でシャワーを浴びて倒れ込むようにして、ベットで眠った。
気付くとけたましい目覚まし時計の音で目が覚めたが、すでにスヌーズ5回目で遅刻までぎりぎりの時間に迫ってる。
「うわっ、この時間はやばい。急がないと遅刻確定だわ。」
急いでクローゼットから服を引っ張り出し、髪を簡単にまとめて手早く化粧をして家を飛び出す。
「何とか電車に間に合った。起きてから電車に乗るまで30分なんて、私もまだまだ若いわね。」
「そういえば今日から新年度になるから、新しい課長がくるってみんな噂していたな。優しい矢坂課長は定年だもんな。今度くる課長も優しい人がいいな。」
新しい課長はどんな人なのか想像を膨らませていると、ふわっといい香りを感じた。
隣を見ると、イケメンが隣に立っている。
いい匂いまでしてイケメンで高身長なんて、神様は不公平だと心の中で毒づいていると、そのイケメンがおもむろに顔を近づけてきた。
しまった口に出てたかな、もしくは変態かもしれないと身構えたとき。
「スカートファスナー空いてますよ。」
と耳のもとで囁き、スカートのファスナーに目配せしている。
そんなばかなと確認すると、スカートのファスナーが全開になっていた。
朝寝坊して慌てて準備して出てきたせいだ。
スカートのファスナーが開いているのに気付かずに電車通勤していたのだ。
慌ててファスナーをあげたところで、ちょうど降りる駅についた。
恥ずかしすぎて、その親切な人に何も言わず急いで降りた。
ちらっと教えてくれた男性を見ると、その男性も降りる駅だったようで電車から降りている。
とにかくその場を直ぐ離れたくて、早歩きで会社に向かった。
会社が見えてくると、気持ちが落ち着いてきて、お礼も言えず立ち去ってしまったのはよくなかったかなと思い始めたが、今となってはどうしもないことなので深く考えることはやめるこにした。
会社に着く前に教えてもらえてよかった。
言いにくかっただろうに教えてくれたのに、御礼も言えず失礼な態度をとってしまったことを
心の中で謝った。
ふわっと香るにおいと顔はよく覚えているが、もう二度と会うこともないだろう。
心の中で謝ったことだし、忘れることにしよう。
なんと言っても今日から新年度だし、新しい課長もくることだから気持ちを切り替えていこうと自分に言い聞かせ、顔をあげて会社の入り口に向かった。
実はこれが最悪な一日のはじまりだった。
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