目が覚めると猫の姿になってしまっていた男が、女子大生に助けられ、なぜか同居することに。
タイトルにもあるように、クール系タラシヒロインの昴がとても素敵です。
冷静だけど行動力があり、記憶を失って戸惑うハチに寄り添う優しさも持ち合わせています。ぐいぐい引っ張っていってくれるところが格好良すぎます。
フィクションっぽさが薄く、とてもリアルな魅力にあふれていて、私も読んでいるうちに、彼女にすっかり心をつかまれてしまいました。
ハチは昴に協力してもらい、夜の8時に猫になってしまう現象について調べていきます。
なぜ猫になってしまうのか。
どうすれば完全に人の姿に戻れるのか。
魔女とは。契約とは。
そして――ハチはどんな人間なのか。
色々な謎にあふれていて、その謎が少しずつ紐解かれていく過程を楽しむことができます。
たくさんのドキドキと癒しを味わうことができ、最後は温かい気持ちになれる作品です。
(「イケメン女子が大活躍する話」4選/文=蒼山皆水)
しかも魔女も出る!現代を舞台にしたファンタジーで、主人公が猫(トラ猫)になってしまうところから始まります。
クールで心優しく、行動力のあるヒロインに拾われ、助けられながら失った記憶と人間としての姿を取り戻すストーリーは、ほっこり具合とドキドキ具合が良いバランスを取っていて、とても楽しいです。
主人公とヒロインだけでなく、周りの登場人物も皆、個性豊かで、ハラハラしたり、ドキドキしたり、一部萌えたりできるのです!
謎解き要素もあって読み手を飽きさせません。猫化ゆえの葛藤も書かれていて、猫化モノ好きには堪りません!
なにより、猫描写が……か、か、可愛いーーー!!
猫好きや、クール系世話焼きヒロインが好きな方には、是非読んで欲しいお話です!
起きたら猫になっていた。
日常では絶対に出会えない光景です。
しかも猫になる前の記憶が無いという魅力的な始まり方が印象的でした。
謎でストーリーを引っ張っていく手際も鮮やかでどことなくミステリのイメージが湧きます。
しかし純粋な推理小説と云うよりはミステリ要素のあるファンタジーというのが正しいでしょうか。
ですがそれは悪いことではありません。
多くの小説は技術としてミステリを利用しています。
謎がない小説は数えるほどしかありません。
この小説もそのことをよく分かっているのだと思います。
読者がどこに興味を覚えるか、それを計算して緻密に構成されている。
またヒロインの性格もとても良い。
純粋に可愛いとは云えないかもしれませんが論理的に行動し、自分の正しいと思ったことのために動くというのは魅力的です。
彼女の性格に惹かれる人は多いのではないかと思います。
文体も読みやすく過度な装飾もないので映像が眼に浮かびます。
猫になったことなんて誰もありませんが猫の視点を忠実に再現していると感じました。
また人間としての自我みたいなものが主人公を縛っていて猫であることを受け入れられないようにも思えます。
当然、誰も猫として生きたいとは考えないでしょう。
そんな葛藤がとても人間的で主人公を共感できる人物として描き出しています。
世界観とキャラクターが一緒になって成長しているような不思議な気配を醸し出しています。
完全なファンタジーではなく、むしろ日常的な部分が詳細に描かれることによってこの小説は特別なものになっているのではないかなと。
しかし猫になるたびに全裸になってしまう主人公が可哀想で。
女子大生と一緒に部屋に住むという普通に考えればかなりぶっ飛んだ設定なのですが、そこまで恋愛観が出ないのが良いと思います。
謎を前面に出している効果がここに現れているのです。
真実を追うというテーマを扱うことで小説自体がロジカルだと云えるかもしれません。
これは他のファンタジーにも負けない要素だと思います。
ここからどんな展開が待ち受けるのか、そして主人公は記憶を取り戻せるのかなどさらに楽しめる要素が既に内包されています。
序盤でこれほど面白く出来るので、続きも面白くなると約束したも同然です。
伏線も細かく張り巡らされているようでさらに期待が高まります。
伏線とは回収しなくても考察できるというメリットがあるので。
ファンタジーとして日常から非日常までを網羅できるとても面白い小説です。
そんな本作を読んでみてはいかがでしょうか。
副題の「記憶喪失の僕は、猫になってクール系タラシの女子大生に拾われる」だけを見れば、おバカなラブコメかとも思わされるのですが、確かに軽い文体や恋愛を臭わせる描写もあるのですが、全体的に流れるトーンは程好い緊張感を持ったシリアスよりです。
人がネコに変わる、ある時刻を境目に人に戻るというファンタジー要素もありますが、それらを面白おかしく書いたものでないのは、私だけが受ける印象ではないはずです。
人間関係、それにまつわるドラマが主であり、ファンタジーというジャンルから想像させられる派手な描写も形を潜めています。
だからこそ、人の描写に強く惹かれます。
まず悪人がいない。
怪しいと感じる人はちらほらと見えますが、純粋な悪役は存在せず、いうなれば敵役が存在するのみで、それても主人公の昴とハチに関わる重要な存在として、悪意や敵意とは無縁であるように感じました。
ハチの一人称で進む物語は、ハチの未熟さ、青臭さを感じる点が多々あり、だからこそハチが好ましい青年であると感じさせられました。
人間関係をきちんと描写した、骨太の人間ドラマ…私はそう読めました。他の方にも読んで、感想を残していって欲しいと思う物語です。
猫になってた 女子大生に拾われた
たぶんこの2個の要素だけだと手に取らなかった作品だと思うのですが、
キャッチコピーにある『こんなタイミングでもどるなんて』という部分に興味を引かれて読んで見ることに、
1話の時点でそのイベントは起きてたのですが、すぐさま通報待った無しみたいなシチュエーションにも関わらず、
ヒロインの大人びた?というか、マイペースな振る舞いを見せ、
『朝起きたら、助けた猫はそこにいなくて、一糸まとわぬ男が自分の家に』
というシチュエーションを、大学に行かないとなので話はまた後で、と。
私自身は、あんまりラッキーハプニングみたいなイベントは好まないので、この物語の進め方は『お?』ってなった要素で面白そうに思い、期待をして読み進めるとちょっとしたミステリーっちくな要素がでてきて、
『断片的に抜け落ちた記憶』
『仕組みや理由は一切不明一定期間で猫と人の姿が入れ替わる』
物語はこの要素を軸に描かれていました。
『記憶の手がかりを捜す』
『猫になる原因や、異常のない人間に戻る』
そんな感じの目標が物語のかなり序盤で明確に決まってるので、話が頭に入りやすく、作者さんの描写の技量がかなり高いので、セリフ以外の文章まで読み飛ばす事なく楽しめる作品でした。
男の第一印象は変態かと思っていましたが、作中の中で見えてくる人格者のような性格だとわかる過程や
一緒になって問題を解決するために一緒に行動してくれる、クールながらも魅力的な言動や信念をもったヒロインなど、
シナリオ以外の要素まで楽しめる要素がいっぱいの作品でした。
私の評価は✩3です。なんなら✩3でも押したりないと感じるほど夢中になって呼んでた作品でした。
もしよければぜひ一読をご検討ください♪
8時になると人から猫へ、猫から人へと変身してしまう記憶喪失の主人公が、女子大生に拾われて共同生活をする……というサブタイトルやあらすじを見て、最初は「可愛いヒロインが出てくる美少女ゲームや、ちょっとHな展開もあるラブコメラノベみたいな内容なのかな」と想像しました。
しかし蓋を開けてみると、実際は全く違う内容でした。それでいて満足いく読後感を味わえる、良い意味で予想外・想像を裏切られる作品です。
『ハチ』と名付けられた主人公が『昴』と出逢い、共に暮らしていきながら「なぜ猫になってしまったのか? 過去の自分は何者だったのか?」を探る、ミステリーテイストも含まれるお話でした。
少しずつ距離が縮まり、温かな感情が芽生える二人。かと思えば『魔女』との対決では緊迫する場面が続き、全ての真実が発覚した後には『人生とは、己とは』というテーマが、深く心に沁み入るストーリーとなっていました。素晴らしい完成度です。
『人が猫になる』という部分はファンタジーですが、論理的に物事を考える昴や、見ず知らずの女子に世話される葛藤を抱えるハチの心情、周囲の人々の対応などは、どこまでもリアリティに溢れています。
まさに『現代ファンタジー』のジャンル名に嘘偽りない、一人の青年のドラマです。私が今までに読んだ同ジャンルの作品で、一番『現代のファンタジー』をやっていたと思います。感銘を受けました。
惜しい点といえば、冒頭にも述べた通り、サブタイやあらすじがキャッチーすぎる部分かなと。
素敵な現代ドラマであるのに「あぁ、男の願望が滲み出てるオタク向けの作品ね」と勘違いされて嫌厭されたり、逆に「猫になって女子大生とドキドキ甘々な生活してぇ~」と願う層からは「なんか……思ってたのと、期待してたのと違うな」と取られるリスクを孕んでいます。
しかし、そのミステイクを補うのも読者レビューの役目でしょう。
猫になって女子大生とのHなハプニングがあるような、ライトな共同生活モノではないです。どちらかというと一般文芸寄りです。
しかし読めば必ず――とある青年が猫となったのをキッカケに、人生を見つめ直すまでの姿に――『何かしら』を感じることができる、綺麗にまとまった良作の読書体験を味わえます。オススメです。