主税（ちから）君の不思議な冒険

その日は12月14日、今年もあと半月で終わろうとしている日だった。
　一仕事終えた俺は、馴染みのバー”アヴァンティ”のドアを開けた。
　そこはバーテン一人と、未亡人であるママで営んでいるささやかな店だ。
　カウンターが六つとボックス席、
10人も入れば一杯になってしまう。
　だから都会の喧騒に煩わされたくない俺が、ゆっくり腰を落ち着けてグラスを傾けることの出来る数少ない場所だ。
　ドアを開けると、カウンターの前には、異様な人物が一人座っていた。
　時代劇から抜け出してきたような男・・・・火事場装束に二本差し。