5.勘弁してくださいよ
よっぽどの顔をしていたのか、
「重くなる話じゃないってば。とにかく
ヒューマノイドが後ろ手を組んで、
「……神さまが混乱しそうだな。その状態でお祈りしたら、
「ありがとー! 疲れてるレンのために、ホント、
「ホテルだって、入り口に防犯カメラくらいあるんだぞ。こんな
実際問題、
「それにしても、じゃあ、人間関係も就活もゼロ
「レンこそ大げさよ。あたしだって、高校までは普通に日本で通ってたし、友達ならいっぱいいるよ。就職のあてだって、実は今から……」
もうすぐ駅が見えるタイミングで、雑談が止まった。
いや、ヒューマノイドが、動きそのものを止めた。
「ごめん。なんか受付で、もめてる。あ……元カレだ」
「なんだって? おい、大丈夫なのか?」
「すごい騒いでる。警備の人も……
「ロス市警か。悲惨だな」
荒っぽさで、ジョークどころか度々ニュース映像にもなる、ロス市警だ。
「んー、さすがに後味が悪くなっちゃうな。あたしの名前、叫んでるし……ちょっと行ってくる。待ってて」
「はあ? 待つって……この状態でか? おい! こっちは深夜の
慌てて叫んでも、どうやら遅かった。正座したような格好のヒューマノイドの、頭部モニター画面は、運営会社のロゴマークが踊る待機状態になっていて、肩の白色LEDも消灯した。
「……いつまで、だよ……?」
この後に及んで、放置して帰るわけにはいかないが、運ぶ手段もない。呼ぶとしてタクシーなのか、宅急便なのかロードサービスなのか、それすらわからない。
周囲には、飲み物の自動販売機さえ、ない。そして寒い。
「元カレとか、もめるとか……本当に元気だよ。世の中、みんな」
どうしようもなく、
思い出しても楽しくはないが、こんな仕様もない、暗くて寒い空白時間は、楽しく過ごそうとしても無理だ。
修正できなければ、また同じ結果を繰り返す。と言って、一人で気がついて修正できるくらいなら、この年齢まで苦労していない。
わからない、わかりにくいと
「にしても、あいつ……なんか、就職のあてがあるみたいに言ってたな」
ぶった切られる直前の、
「理事長さんと仲良くしてて、
帰国を決めた理由は、はっきりしないことを、ごちゃごちゃ言っていた。そういうこともあるだろう。人生に一大決心なんて、あんまりない。
なんとなくとか、ちょっといい感じとか、運命だって多分、その程度のものが集まってできている。
********************
結局、ロス市警の大ざっぱな事情聴取も含めて二時間ほど放置された
「なになになに? レンくん、あれから
「
「誤解も早とちりも、いいところです。
取らざるを得なかった数日間の有給休暇の後、興味本位フルスロットルな
〜 冬の星に願いのようなものを 完 〜
【短編連作】鏑木博士の発明品 司之々 @shi-nono
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