ふんわりと優しい空気に包まれた学園風景。物語の行き着く先は……!?

ふんわりと優しい空気に包まれた学園風景。心地よくするすると読み進めると、最終話でガツンと唸らされます。
委員長があれほどに成瀬くんを笑わせたい理由が、こういうことだったとは。
普段心のどこかで常に感じている違和感が、目の前に不意に立ち上がったようなラストでした。
綺麗なもの、出来の良いものだけで社会を固めたい。飛び出るものや規則を乱すものは邪魔であり不要。そういう考え方がこの社会を覆っていることに違和感や疑問を感じても、社会の片隅で小さく呟くだけではその傾向が覆るわけでもなく——ことによれば、私たちはいつの間にか、ここに描かれたような現実を鵜呑みにさせられてしまうのかもしれない。そんな恐怖が背筋を寒くしました。
ただひたすらに笑顔を浮かべる、真面目で逆らわぬ人間たち。統治するものにとって都合の良い人間だけが育てられる社会に、私たちは疑問を感じなくて良いのか。
キュートな恋愛物語を読んでいるつもりが、最後は人間社会の未来を深く考えさせられることになるとは。天晴!と思わず手を打ちたくなる短編です。

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