「いえ。メタフィクションですから」

[注;メタフィクションとは物語中に作者が登場する創作技術である。これの導入により、虚構性を高めうる(読者に作品が虚構であることを強く意識させうる)。しかし、度が過ぎると、かえって読者をしらけさせてしまうことがしばしばあるという、まさに「両刃の剣」の技術であり、ゆえに現在用いる者はほとんどいない]

 メタフィクション評論家(絶滅危惧種)いわく「本作にて、作者はあらかじめ『作者』という人物を登場させた上に、秘かに作者をこの物語中に忍び込ませることにより、本書の虚構性を通常ならあり得ぬレベルにまで至らせることに成功している。メタフィクションの歴史上の燦然と残る傑作といえよう。
 では、作者が本書中のどの人物に該当するかというと、『作者』でないのは明らかである。それでは、ノンフィクションである。それ以外の主要な登場人物となると、アルファベットを冠した人物4人。その中で、本作を書くことができる人物はといえば、自ずと4人中、最後に出て来た人物となる」

 助手「なるほど。読んでみましょう。こうなるのですね。でも、このレビューもフィクションなんでしょう」

 評論家「いえ。メタフィクションですから」

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