誰かを特別に想う、その感情の行きつく先にあるものは…?

駿河凪の人生は不幸に見舞われていた。
天涯孤独の身の上に、道を歩けば通り魔に襲われ、頻繁に行き倒れる。
しかし何より一番辛いのは、死神の<共謀者>として人の死を眼前で見なければならないことだった――。

なぜ死神と関わることになったのか。その経緯については前作『死神の共謀者』で語られていますのでぜひそちらをご覧ください。
本作は凪がそんな死神のもとを逃げ出したところから始まります。が、もちろん本作から読んでいただいても大丈夫な内容でした。

物語は主人公・凪を中心に、彼に執心する人外の存在・死神、そして行き倒れた凪を偶然拾った作家の青年・千秋と、掌編ごとに語り手を変えて一人称で進みます。

ネタバレ無しで本作の魅力を語るならば、それぞれが吐露する繊細な心理描写の一言。
この物語の登場人物たちはみな(本人が自覚しているかどうかは別として)相手に対する情が深い。
語り手に感情移入した読者は、「誰かを大切に想うってこんな気持ちだった」と追体験することでしょう。

ちなみに本作はBL的な描写がありますが、男同士の恋愛を描くことが目的ではなく、彼らの情愛を描き出すために必要な手段であると受け止めました。
主題は相手を想う気持ちであり、それは性別も、ときには種族さえも超えてしまう強い感情です。
凪は最後に、誰を、何を選ぶのか……?

他者から与えられることで初めて満たされる、優しさと甘さに溢れた幸福感。
ぜひ彼らと一緒に体感してみてください。