読み返すたびに気付くそれぞれの想い。三人の関係性に注目

  • ★★★ Excellent!!!

 この作品は単品でも読めるのですが、シリーズを通して読むと味わいが深まって大変よろしくて、ぜひとも「死神の共謀者」を読んで死神と主人公の凪との関係を知った上で「いつかまた奈落の底で会う君のために」で死神の過去を知ってから、本作にたどり着いていただきたいです。

 でもこの作品から読みたいという方に向けて簡単に解説しますと、凪はものすごい不幸体質ですが、父親を亡くした事をきっかけに命の危機レベルの不幸に見舞われるようになります。犯罪者に殺されかけるというのが主な危険ですが、大けがを負ったあたりで死神に助けられてるパターンが「共謀者」での死神と凪の関係。
 「逃亡者」ではスプラッタな死神の元にいる事に耐えかね、凪が逃げ出した後、新たな出会いと関係を築いていくストーリー。

 鴨川千秋という作家と出会い、よくわからない微妙な距離感で二人は付き合っていくのですが、何故か彼といる間は凪から命の危機が遠のいていくという不思議な現象が。
 凪の不幸の原因は何なのか、そしてその解決方法にたどり着けるか? というのが主軸ですが……。
 凪の死神への感情、死神の凪への感情、千秋の凪への感情、凪の千秋への感情など、3人の関係の距離感がとにかく良い! 今時ならエモいというべきでしょうか。

 凪の事を想うと千秋と関係を深める方がいい、でも死神の気持ちを想うと凪は死神と関係を深めて欲しいみたいな、くそどっちも捨てがたい! という心の揺れが読者を襲う。三角関係なのにどちらも応援したくなる絶妙バランスがたまらない。

 主要登場人物が全員男なので、心を交わす話の流れのうちにボーイズラブの方向に行ってしまうのですが、それも仕方なし! と思ってしまうのです。