快楽殺人鬼と暗殺者。
人の命を手にかけることを宿命とすること以外、正反対の二人。
けれど運命は、彼らを引き合わせてしまった――。
人を殺さずにはいられない衝動を抱えて生きる手塚と、人を殺すためだけに育てられた鳴瀬。
物語は二人を中心に、彼らを取り巻く人々にも順に焦点を当てつつ進行していく。
大好物な単語がタグに並んでいるので気になって読み始めた本作。
ああ、よくあるエンタメね。などとすっかり油断していた!
一話目から胸倉を掴まれるようにしてこの世界に引き込まれ、一気に読了。そして感無量の今に至る。
非日常的な設定なのに読み手が違和感なく彼らに共感できるのは、リアリティある丁寧な日常が描写されているからこそ。
彼らはもしかして、自分のすぐ近くにいるのではないだろうか。
ふとそんな錯覚に陥ってしまう瞬間。
本来であれば人殺しとして弾劾されるはずの彼らに、すっかり感情移入してしまっていた。
彼らの人生とプライドをかけた挽歌を、ぜひお聞きいただきたい。
鳴瀬史郞と手塚彰宏は、表と裏の顔を持っている。
表向きは、鳴瀬はオフィス機器の契約担当、手塚は図書館の司書。だが裏の顔は、プロの暗殺者と快楽殺人鬼だった。
ある日、鳴瀬のターゲットを手塚が先に仕留めてしまい、二人の対立が始まる。
この小説の魅力は、何といっても、テンポの良い展開と、鳴瀬と手塚の息を飲むようなアクションシーン。そして、それぞれに違った理由で殺人者になった二人の心理を克明に描いていることだ。
反社会的な存在、あるいはサイコパスでありながらも、彼らは人間らしい感情や信念を持ち続けている。
この小説は、ハードボイルド好きの人におすすめなのは言うまでもないが、BL的な妄想好きの人も楽しめるかもしれない。そのくらい鳴瀬と手塚のやり取りは、かっこよくて胸をドキドキさせる。
スピーディでラストまで飽きさせない展開なので、ぜひ、多くの方にお読みいだたきたい。
めちゃくちゃ面白かったです!
最高のハードボイルドエンタメ映画を1本観終えたような満足感。
物語は二人の男を主軸に展開します。
幼少時の事件がきっかけで殺人衝動に目覚めた男・手塚。
幼少時からプロの殺し屋になるべく育てられた男・鳴瀬。
「殺し」という共通点のある、しかし真逆の信念を抱く二人が邂逅することで、互いの歯車が大きな軋みを生み始めます。
この二人が、どちらも非常に魅力的です。
手塚は自分の異常性を自覚し、殺人衝動を恐ろしく的確にコントロールしています。
鳴瀬は淡々と殺しの仕事をこなす中、組織から与えられた仮初の家族に情を抱き始めます。
ハードなアクションシーンも読み応えがありますが、彼らの人間らしさや心の揺れなどの描写が秀逸で、深く感情移入しました。
視点や場面がテンポよく切り替わり、一切無駄のないストーリー展開。
最初から最後まで駆け抜けるように、気付いたらラストシーンを迎えていました。
本当に面白かったです! もっと多くの人に読まれますように!
この作品は、まさにハードボイルドである。
私自身、そういった作品を書きたいと常に思っているが、どこか甘くなってしまいがちなのです。
その点、この作者は筋の通った反道徳的な作風を見事に表現しているからついつい読み込んでしまうのだ。
小説にはいろんな分野があると思う。
好むものもあればそうでないものもあるだろう。だけど……この作者の作品を読んでほしいと思うのです。
カクヨムは転生もの、ラブコメなどが高く評価されている。
それもそれで良いのだけれど……
こういった作品も高く評価されるべきだと思ってレビューを書かせてもらった。
ぜひとも、あなたの《ヨム》に加えてほしいです。