こんなファンタジーがあるのかと終始感動し、度肝を抜かれた物語でした。素晴らしかったです。
錘という閉ざされた世界と、汽界という無限の可能性に満ちた世界。そこに生きる果朶たちの、複雑に絡み合いつつ緩やかに紡がれていく人生。それらが綾のように予期せぬ模様を描き出した時、立ち現れる全体像の遠大さと奥深さに激しく心を揺さぶられました。後半もうあちらこちらで涙がこぼれてならず…(というか号泣)
細部に至るまで丁寧に、魅力的に描き出される錘の暮らし。汽界を読み解き究める人々の「科学」の姿の解像度の高さとオリジナリティ。人間への深い洞察をもって描写される果朶たちの心情。無駄のない構成と確かな筆致。どれをとっても瞠目する素晴らしさです。
ぜひ多くの方に読んでいただきたい作品。
拝読できてとても幸せです。ありがとうございました!
突然ですが、あなたは師弟フェチですか?
私はもちろん「そうです!」と即答します。師弟関係でしか表現できないあの特有の雰囲気、最高ですよね。
本作「斯くて陽は昇る」は読者の想いを満たしてくれる作品でもあります。
物語の舞台は錘の国。
下層域で働く少年・果朶(かだ)はかつて学院で天才の名をほしいままにしていましたが、ある日を境に特殊能力を失い学園を去ります。
そんな果朶の前に現れたのは錘宮の書記官を名乗る少女・彗翅(すいし)。彼女は国の上層部で秘密裏に進められている飛行技術の開発に協力してほしいと果朶に持ちかけます。
開発の目的は、やがてくる錘の国の食糧難を救うため未踏の天涯山(てんがいさん)を超えること!
口は悪いが根は優しい果朶は彗翅の熱心なオファーに押され手を貸すことに。
しかしやがて国内には『咳嗽症(がいそうしょう)』と呼ばれる風邪に似た病が蔓延しはじめます。高い死亡率により次第に不足する労働力。果朶たちは飛行技術の開発を急ぎます。
そんな果朶の前にかつての師匠であり、今も変わらず天才として国の中心に存在し続ける先生が現れて…。
二章・三章では果朶の過去を織り交ぜつつゆったりと進み、事件は四章から怒涛の展開を見せはじめます。
作者さまの描く緻密な世界と繊細な描写をぜひお楽しみください。