第4話 MILLION ONDEMAND
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『秋葉原エイトミリオンで【永遠サーキュレーション】でした。皆さん、わたしの歌を聴いてくれて、ありがとうございます!』
「――いかがですか、皆様! 世界初の
「質問よろしいでしょうか。……合成音声を用いた歌唱ソフトウェアはこれまでにも例があると思うのですが、御社の製品が既存と比べて異なる部分はどこでしょう」
「素晴らしい質問をありがとうございます。
『はーい、マスター。お集まりの皆さん、びっくりしないでくださいね。わたしは今、あらかじめ書かれた台本じゃなく、自分の意思で考えて喋っています。世界で初めて
「……で、では。あなたは本当にAIなのですか」
『いやだなぁ。もっと難しい質問をしてくださいよ。でも、AIじゃありません、
「よろしいですか。あなたは自分の意思で考えて喋っていると言いましたが、所詮はプログラムされた通りの思考しかできないのでは。何をもってあなたが意思を持っていると言うのですか」
『難しいですねー。哲学的ゾンビとか、中国語の部屋とか、そういうお話ですか? わたしは勉強したから知ってますけど、わたしのモデルの
「メ、メタ……?」
『わたしは本来、美音ちゃんが知らないこととか、考えもしないことを喋ったらいけないんです。……という、わたしのこの発言自体が、わたしというキャラクターを外から見下ろすような発言をわたし自身がしているわけですから、メタフィクションってことになるのかなって』
「あの、いいでしょうか。美音ちゃんというのは……声と顔が似てるとは思ってましたが、まさか、子役の?」
『はい、その美音ちゃんです。わかってもらえて嬉しいです。美音ちゃんは、わたしのお友達で、先生で、お姉さんで、そして、わたし自身なんです。……あ、でも、一つ間違っていますよ。顔は確かに3Dモデルを似せてるだけですけど、声は似てるんじゃなくて、そのものなんです。わたしのこの声は、美音ちゃんの声をサンプリングして作られたものなんです』
「そ、それは、倫理的に問題がないんですか!? だってその、美音ちゃんといえば、病気で――」
『美音ちゃん自身が望んでくれたことです。わたしに声を託せば、お母さんからもらった大好きな声を未来に残せるからって……。皆さん、美音ちゃんは今、病室のベッドで、わたしの最後の調整に付き合ってくれています。わたしのリリースの暁には、どうか、わたしの歌声を通じて、彼女のことを思い出してあげてください。お願いですよ』
「……こ、こんなのハッタリだ! AIにこんな高度な会話ができるもんか。私自身もAIを研究していたから分かる。人間とここまで複雑な会話を繰り広げるなんて、人間にしかできないはずだ!」
「最大級のお褒めの言葉と受け取っておきます。皆様、これがハッタリかどうかは、リリースされれば分かるでしょう。MI-ON型
「個性? いま、個性とおっしゃいましたか?」
「はい。量産品ではない
「そんなことが……」
「我々はこのシステムを、
「そして、このMI-ON型
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