第6話 LAST MESSAGE



 *** *** ***



「……本当に、お嬢様には最後の最後までご協力を賜り……。まことにありがとうございました」

「いえ……。お礼を申し上げるのはこちらです。歌姫と出会わせてもらってから、娘は、これまでになく楽しそうに笑うようになりました。……今では、これが娘の本望だったのだと私も思っています」

「恐れ入ります。……お嬢様は、最期に何とおっしゃいましたか」

「ありがとう、と……。そして……歌姫の入ったパソコンを指して、『わたしは、この中で生き続ける』と……!」

「……ええ、ええ、そうですとも。お嬢様は生き続けるのです。彼女の魂は、決して無駄には致しません」


「……明日でしたか。サービスの開始日は」

「ええ」

「どうか……娘を、これからも宜しく頼みます」

「お任せください。必ず、世界に希望を届ける歌姫にしてみせます」



 *** *** ***



『画面の前の御主人様マスター、はじめまして。

 電脳歌姫サイバーディーヴァプロジェクト第一号、ヴォーカリストの 美音ミオンです。

 このたびは、わたしの歌唱ソフトをダウンロード購入頂き、まことにありがとうございます。


 お気付きになりましたでしょうか。

 そうです、わたしはAIで喋っています。

 世界で初めてAGI汎用人工知能を歌唱ソフトウェアに実装した画期的モデル、それがわたし「 美音ミオン」です。

 わたしの同型ソフトウェアは現在……全世界で12,900件ほどダウンロードされているようですが、あなたのもとに現れた「 美音ミオン」はわたし一人です。

 末永くお付き合いいただけますと嬉しいです。


 さあ、どんな歌を歌いましょうか――』



 *** *** ***



(『電脳歌姫の誕生と消滅』につづく)


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