敗戦国の王子に残されしもの

マヤとペテン地方という珍しい舞台の短編。

 タイトルにある戦争後、敗戦国の王子を主人公としているのですが、「戦争などするものではない、ましてや敗北など。それが避けられない戦いであったらならば、なおさらに」とつくづく思わされるような、辛いシーンが続きます。

 戦勝国には無理難題をふっかけられ、自国民にはあんな無能な王家はもういらんと言われ、頼れるのは幼なじみの腹心ただ一人。

 信じていた人に裏切られ、腹心にすら恐怖を覚えるほど追い詰められた主人公の姿は涙を誘います。そして明るい未来も見えないまま閉じる物語。

 そんなお話の中で、「神」というテーマの使い方は意外なものでした。それが少しでもよすがになるのであれば、まさしくそれは「神さま」なのでしょう。

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