よるべなき亡国の王子とその腹心

 戦に敗れた国の若き王子とその腹心が、強国に無理を言われたり、祖国でつらい立場に置かれたりするお話。

 重厚な時代ものの物語、それも「マヤ文明風」という珍しい舞台の作品です。
 自分は(このレビューを書いている私個人は)マヤ文明については何も知識がないのですけれど、それでも十分に楽しめます。
 ある種のファンタジーを重ねられるというか、「現代の日本ではない、いつかのどこか」のお話として堪能しました。

 主人公らの身に降りかかる苦難というか、置かれた状況そのものがもう苦しくて切ない!
 完全にジリ貧で、頼れる味方もほぼないような状況で、なおも気高くあろうとする若き王子の、その悲壮な姿には胸を打つものがありました。

 最終盤が好きです。お話の主軸は王子と腹心、そのふたりの関係性や絆にあると思うのですけれど、それがああいう形に収まっていくのがもう……ここでは詳しくは触れませんので(ネタバレになるので)、ぜひ本編で見てみてください。
 とても心を揺さぶる物語でした。苦境に立たされた人間のドラマっていいよね。