第8話 ◯◯◯おあ◯◯?

 なんで? なんでなんでなんでなんで??

 え? どういうことーーーーーーーー!!


 神有かみありツキト! 十七歳! ただいま混乱中! セクシーな小悪魔おねーさんが目の前に現れました。そしてキノちゃんが行方不明です。


 え? どういうこと?? どういうこと!?


 キノちゃんがこのおねーさんに変身したってこと??

 あ、よく見るとキノちゃん、ソファーの下に落っこちている。

(すごい寝相だな……)


 俺は、リビングのカーペットで眠っているキノちゃんをダッコすると、ソファーにそっと寝かせて毛布をかけた。するとおねーさんは、笑顔でぺこりと頭を下げた。


 うん、やっぱりそうだ。小悪魔おねーさんの正体はキノちゃんだ。多分、キノちゃんの夢だ。そしてそのキノちゃんの夢を、俺は現実世界で見ているんだ。


 ちょっと何言ってるか、わからないけど、そうとしか説明しようがない。

 そう説明しないと、ハロウィンの夜から起こり続けているこの不可解な現象の説明ができない。


 キノちゃんが眠ると、おねーさんに変身する夢を見て、その夢の中で俺に出会って、いろんなイタズラをしていたんだ。

 カノの父さんは、仕事の出社時間が遅い。俺たちが学校に行く時間に、ようやく起き出してくる。キノちゃんもまだ寝ていたはずだ。そして午後に現れたのは、きっと幼稚園でお昼寝の真っ最中だったんだ。

 そして今日は、幼稚園でお昼寝を全くしなかった。だから今になって、お昼寝をして、おねーさんに変身する夢をみているんだ。


 でも、どうして? どうして俺にイタズラするの?


 わからない。そんなことはわからない。わかるわけがない。でも、俺はもし、このタイミングでおねーさんが現れたら、絶対にお願いしたいことがあった。


「トリートでお願いします!」


って頼むことを決めていた。そしてすぐに台所にいるカノのところに行くんだ。


 多分だけど、おねーさん、いや、キノちゃんの〝トリート〟は、かけてもらって一番最初に出会った人と事故チューができるシステムだ。そして、事故チューをした相手にに好きになってもらうことができる。  

 きのう、ミナミ先輩は、俺のこと「結構いいな……」って思っていたレベルだったのに、いきなりあんなにも積極的になった。つまり、脈ありな異性と仲良くなれる魔法なんだ。


 だったらやることは決まってる。〝トリート〟の力を借りて、気まずくなっているカノと仲直りをするんだ!


 さあ、こい。おねーさん!!


「…………てるみー! らいくおあらぶ?」


 え? どういうこと?


「てるみー!! らいくおあらぶ??」


 え? え? どういうこと? どういうこと?


「てるみー!!! らいくおあらぶ???」


 好きか愛しているか……おしえて? ってどう言うこと!?


「てるみー!!!! らいくおあらぶ????」


 そんなこと言われたって、好きにきまっている。カノのことを好きにきまっている。そして、あ、愛しているに決まっている。


「てるみー!!!!! らいくおあらぶ?????」


だって、俺はカノに告白したんだ!


『俺たち、つきあっちゃわない??』


って…………ああぁ!


 お、俺、言ってない、カノに「好き」って言ってない! 「愛してる」って伝えていない!!

『俺たち、つきあっちゃわない??』

しか言っていない! 半端な告白しかしていない!!


「てるみー!!!!! らいくおあらぶ?????」


 なんてこった。なんてこった。俺は自分の気持ちを伝えていない。

 カノに気持ちを伝えていない! あんなの、告白って言えない!!!


「てるみー!!!!! らいくおあらぶ?????」


 俺は、おねーさんを見た。おねーさんをまっすぐ見て言った。


「あいらいくカノ。あんど、あいらぶゆー」

「いえす! とりーと!! とりーとめんと!!」


 おねーさんは、にっこり笑って指をパチンと鳴らした。

 俺は、全身にオレンジ色のオーラをまといながら、キッチンに向かって行った。


「カノ!!」

「な、なに?」


 キッチンでシチューの味見をしていたカノは、お玉をもって顔をあからめた。

 俺は一切照れずに言い切った。


「カノ、好きだ! 愛している!! 付き合ってくれ!!」

「う、うん……うれしい……」


 カノは、赤くなった顔をさらに赤くした。

 俺はそんなカノを抱きしめると、そのキレイな色のくちびるにキスをした。

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