第9話 トリックオアトリート?

 あれから15年が経った。

 俺とカノは、あれから色々あったけど、結局5年前に結婚した。

 しっかりもののカノに、しっかりした仕事についていない人とは結婚できないと言われて、しっかりと定職についてから3年後に結婚した。


 今は、おかげさまでしっかりと財布の紐をにぎられて、しっかりと尻に惹かれている。あとついでにカノの家に住んでいる。いわゆるマスオさん状態だ。マスオさんの俺はカノとお義父さん、そして3歳の娘のツキノと4人で住んでいる。

 公園をはさんだ向かいにある実家とは、まさにスープの冷めない距離だ。


 キノちゃんは、高校生になったときから東京に上京をして、今は一人暮らしをしている。

 結局キノちゃんは、あれ以降、一回も俺の前におねーさんを出現させなかった。


 あれは、夢じゃなかったのかななんて思っていたこともあったけど、今では逆に夢ではないと断言できる。だって……


「キノちゃん! キノちゃん!」


 娘が、キノちゃんを見つけて手をたたいてよろこぶ。

 キノちゃんは今、テレビの中だ。やたらと髪を切ったことを気にするご長寿司会者がやっている音楽番組に、生放送で出演している。


 キノちゃんは、とってもセクシーな小悪魔衣装で、歌って踊っている。

 そう、キノちゃんはアイドルだ。

 高校1年の時にデビューして、今や知らない人なんていないトップアイドルだ。


 キノちゃんはとても18歳とは思えない、お色気たっぷりな歌とダンスでフェロモンをまきちらしている。セクシーなんてもんじゃない。(とくに写真集はやばかった)


「キノちゃん! キノちゃん!」


 娘のツキノは、みようみまねで、セクシーなダンスをほほえましくおどっている。

 俺は、キノちゃんの圧巻のパフォーマンスと、娘のほほえましいパフォーマンスを存分にたんのうしていると、歌はシメに入った。


「トリックオアトリート?」

「とりっくおあとりーと?」


 そのすがたは、15年前に俺の目の前に現れた、小悪魔おねーさんにそっくりだった。そして娘のツキノは、15年前のキノちゃんにそっくりだった。



− おねーさんサキュバスに気に入られて、幼なじみとの距離がどんどんはなれてしまいピンチです! − おしまい

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