第2話 とりっくあういんどう?
なんだ? なんだなんだなんだなんだ??
なんなんだこれはーーーーーーーー!!
なんで? 本当になんで? あと俺の目の前の歩いているおねーさんに、なんでみんな気がつかないの、もうハロウィン終わっているのに、もう十一月なのに、ずっと小悪魔コスプレをしているおねーさんになんで気がつかないの。
俺は、学校までの長い長い坂道をのぼる。海沿いの小高い丘に立っている学校までの坂道をのぼる。
学校までの長い長い坂道は、生徒であふれかえっている。なもんだから、俺とミナミ先輩は、さっきからいろんな生徒にジロジロジロジロ見られている。
ああ、学校で悪いウワサが広まるよ。俺イジメられるんじゃないかな? だって学園のマドンナと腕組んで歩いてるんだよ? ミナミ先輩の形のよい胸が、俺の腕に当たっているんだよ? あのミナミ先輩が押し付けているんだよ?
ほら……あそこでヒソヒソ話をしている。
「ミナミ先輩だ。今日も綺麗だなぁ。
「ミナミ先輩、今日もお美しい! そして
「ミナミ先輩と
「まさに、美男美女カップルだな」
は? なんで?? なんで美男美女カップル?? なんで俺が美男にカウントされてるの? てか、みんなヒソヒソ話の声が大きくない??
俺、いつからこんな地獄耳になったの? てか、声が俺の脳内にダイレクトで聞こえてきてないか? なにこれ? ほんとなにこれ???
「とりっくおあとりーと??」
さっきからずーっと僕の前を歩いているおねーさんの声も、俺の脳内にダイレクトに聞こえてくた。ちょっとなんなのこれ? あと、本当にこのおねーさんのことみんな見えてないの?
「とりっくおあとりーと??」
おねーさんがふりむいた。こんどは直接話しかけてきた。おねーさん、後ろ歩きして器用だな、まるで歩いてないみたいにスイスイと……え?
ういてる! おねーさんういてる!! 足がフワフラと地面から十センチくらいういてるうううう???
飛んでいる? あ、浮かんでいるのかな?? どっちでもいいや、どっちにしたっておかしいや! なんで? なんで重力をムシできるの??
「おねーさん、どうして浮いているんですか」
「とりっくおあとりーと??」
だめだ、質問にも答えてくれない。〝とりっくおあとりーと〟しか言ってくれない。
「とりっくおあとりーと??」
うん? そういえばこのおねーさん、きのうは〝とりっくおあとりーと〟の質問に答えたあとに消えてくれたよな。
そうだ! 思い出した!! おれが「とりーと」っていったら、なんだかオレンジ色のオーラに包まれたんだ!
今の状態って、ひょっとしてその影響??
「とりっくおあとりーと??」
てことは、質問に答えれば、このおねーさんは消えてくれるわけだ。よし、質問に答えよう!!
「とりっくおあとりーと??」
俺はきのう、おねーさんに〝とりーと〟って答えたからこんな目にあっているんだ。
嬉しいことはうれしいけど、カノにはフラれてしまった。めっちゃ悲しい目にあっているんだ。
カノは、五十メートルくらい前方を歩いている。ひとりで登校している。
『きのうの話は聞かなかったってことで!!!』
ほんとうは、いっしょに登校するはずだったのに、カノのとなりには、俺がいたはずなのに。なんで、俺のとなりには学園のマドンナのミナミ先輩がいるんだろう……うれしいけど、やっぱり悲しい。
押し付けてくるおっぱいはうれしいけど、やっぱり悲しい。
俺が好きなのはカノひとりだけなんだ!!!!
悲しんでいる場合じゃない! 俺は、カノとつきあうんだ!! これはなんだかよくわからない、オーラ的ななにかでおこってしまったハプニングなんだ。
おねーさんの質問に、〝トリート〟って答えちゃったからこんな目にあっているんだ!
「とりっくおあとりーと??」
「トリックでおねがいします!!」
おれは力強く返事をした。おねーさんのことが見えないミナミ先輩が「ビクッ」として、俺の腕にしがみついてきた。おっぱいが当たってきもちい……じゃない!
いっこくも早くこのへんてこな状況を、おねーさんにリセットしてもらわないと!! そして、おねーさんにおひきとり願わないと!
「いえす! とりっく!! とりっくあういんどう!!」
おねーさんは、よくわかんないことをとなえて、指をパチンとならした。すると、あたりが一面モスグリーン色になった。え? なにこれ??
ブワーーーー!!
とんでもないつむじ風が巻き上がった。そして、
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーー!」
登校している女子のスカートがもれなくめくれあがった!
そして、俺ははっきり見た!
白、ピンク、ストライプ、水玉、チェック、なんかむらさきのレースの大人っぽいのやら、色々スゴイものを見た。
ミナミ先輩の、白だけどスケスケでかぎりなく肌色の「はいてます?」ってかんじの、とにかくスゴイのも特等席で見た。
でも、俺は五十メートル先の、カノのモスグリーン色のパンツに釘付けになった。
こころをうばわれた。
そして、カノは、パンツを見ている俺のことを、めっちゃケーベツした目で見ていた。
五十メートル先でもハッキリとわかる、冷たい、氷のような、悲しいまなざしだった。
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