第5話 とりっくあうおーたー!
なんで? なんでなんでなんでなんで??
え? どういうことーーーーーーーー!!
でも、ミナミ先輩にちょっと、いやとんんでもなく気になることを言われてしまいました。
『君の彼女、なんとなく乗り気に見えなかったから』
どういうこと? どういうこと?? どういうこと???
きのう、俺は確かにカノに告白をした!
「俺たち、つきあっちゃわない??」
って告白した。そしたら、カノはちゃんと返事をしてくれた。
「……うん」
って返事をくれた! これって、OKってことじゃないの???
おれは気になって気になってしょうがなかった。ふりむけばミナミ先輩をはじめとした、先輩方のめくるめくパンチラパラダイスがあるのに、そんなの見る余裕もなく、カノのことで頭がいっぱいになっていた。
俺は、昨日よりさらに早くおおあわてで家に帰ると、速攻で服をきがえてカノの家に行ってインターホンを鳴らした。
ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪
ほどなく、インターホン越しに声が聞こえる。
「はい!」
「俺だけど」
「いまいく!」
そう言うと、あっけなくインターホンは切れた。そして数秒もたたずにドアが開く。
ガチャリ
「よくきたな。あがるがよい」
そこには、ちっちゃな女の子がいた。カノがちっちゃくなった……わけではない。カノの妹のキノちゃんだ。今年で三歳。おしゃまな女の子だ。
カノのお母さんは、キノちゃんを産んだ時に亡くなった。それからもう、ずっとカノはお父さんと手分けをして
幸い、専業主婦の俺の母さんがいたから、母さんがつきっきりで家事の手伝いや、キノちゃんのお世話をしていた。
うちの母さんと、カノの母さんは、幼なじみだ。
「カノちゃんとキノちゃんは、わたしの娘みたいなものだから」
っていつも言っていた。
だから、父さんの海外赴任についていくときは、それはそれはカノとキノちゃんのことを心配していた。俺の母さんは過保護なんだ。俺にも過保護だったけど、カノとキノちゃんに対しては、輪をかけて過保護だった。
俺は、そんな過保護な母さんから、ものすごく念をおされたんだ。
「カノちゃんと、キノちゃんのこと、よろしくね」
って。
とはいえ、ろくに家事もできない俺ができることはほとんどない。むしろカノにおせわされている。俺にできることといえば、
「すーぱーうるとらみらくるちょっぷ」
「ずばしぃ! ヤラレターーーーーーーーちゅどーん!!」
キノちゃんの子守りをするくらいだった。
「おんなのてきは、ほろびた!」
キノちゃんはゴキゲンだ。今日のキノちゃんのリクエストは、戦いごっこ。
日曜日のあさに、エンディングでダンスをおどるアニメのごっこ遊びだ。(チョップが必殺技のキャラはいなかった気がするけど??)
でもまあ、ごっこ遊びだし、こまかいことを気にしてもしょうがない。
ちなみに、きのうはハロウィンごっこで、おとといはエンディングのダンスの練習だった。
「ごはんできたよー」
「はーい」
「はーい」
俺がキノちゃんの子守りをしている間に、カノはばんごはんをつくる。(そうじと洗濯はカノのお父さんの担当らしい)
でもって俺はカノの手料理をご馳走になって、カノのお父さんが帰宅したら家に帰る。カノのお父さんは、出社時間が遅いから、帰るのはだいたい9時前後。俺は、今日もその時間に帰宅したカノのお父さんと、入れかわりで家に帰宅した。
俺は、公園をつっきって、家に帰る。視界にブランコがはいった。俺は、ブランコをこぎながらカノに告白をしたんだ。
「俺たち、つきあっちゃわない??」
「……うん」
昨日のことなのに、えらい昔のことに思える。そして、ミナミ先輩のことばを思い出す。
『君の彼女、なんとなく乗り気に見えなかったから』
結局聞けなかったな……俺は、ばんごはんを食べながら、登校中にカノのパンツを見たことをあやまった。カノは「まあ、不可抗力だし」って、一応、許してくれた。
あと、ブラジャーを見てしまったことは、意外にもカノから切りだしてきた。
「なんか今日さ、更衣室にのぞきが出たんだよね。いきなり窓が「ガラって」開いたの」
「えええええええぇ!!」
やばい、ツメラレる……俺は言葉をしんちょうに選んだ。
「ど、どどどど、どんな男だったの?」
「それが、まっくらで良くわかんなかったの。すぐに窓はしまったし。それに不思議なんだよね。わたし、すぐに窓を確かめたんだけど、窓の鍵、しっかり閉まっていたの」
「そ、そそそそそそそそうなんだ、夢でもみたんじゃないかなぁ?」
「でも、クラスの女の子全員もくげきしたんだよ? 今度あったら絶対にケーサツに突き出してやるんだから!!」
「そ、そそそそそそそそ、そうなんだ、つかまるといいね」
やばい!!! このままだと俺は近いうちにのぞきでつかまることだろう。それまでに、この問題をなんとしてでも解決しないと。
「とりっくおあとりーと?」
このおねーさんに、なんとしてでもおひきとりねがわないと。
「とりっくあとりーと?」
ガチャリ。
おれは、靴を脱いで家の中に入る。おねーさんも、なんのまよいもなく、ふわふわとちゅうにうかびながら土足で俺の家にあがりこむ。
「とりっくおあとりーと?」
「トリックでお願いします!」
おれは、トリックをおねがいした。そしてすばやく目を閉じた。さすがに家のなかでは何もおきないだろう。そして万が一、窓が開いてヤバい場所につながっても、目をとじておけば見てしまうこともない。うん、我ながら完璧な自己防衛手段だ。
すると、おねーさんは、いままで聞いたことないことばを言った。
「いえす! とりっく!! とりっくあうおーたー!!」
おねーさんは、パチンと指をならす。でも、なにもおきない。
「おっけー! うおーたー!! せってぃんぐ!」
やっぱり、なにもおきない。
「しーゆー!」
おねーさんは手をふりながら、ついでに悪魔みたいなシッポもふりふりしながら、フッと消えてしまった。でも、やっぱりなにもおきない。
なにもおきない! そうゆうのもあるのか!!
俺は心のそこからホッとした。今日は本当に災難つづきだった。厄日だった。そういえば今年のハロウィンは仏滅だった。
おれは、どっとつかれて、とっとと風呂に入ってねることにした。
脱衣所でとっととすっぱだかになって、風呂場のドアを開けた。
ガラッ
「ええ!」
おれの目の前には、シャワーをあびるカノがいた。なんにも着ていない、うまれたままのすがたのカノがいた。
「きゃあああああ!」
おれは、カノが手に持ったシャワーのお湯をしたたか顔にあびると、おおあわてで風呂場のドアをしめた。
俺は思った。カノ……結構おっきかったな。
こうも思った。カノ……きれいな色をしていたな。
最後にこう思った。明日……どんな顔して会えばいい?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます