第7話 キノおあこあくまおねーさん?
なんで? なんでなんでなんでなんで??
え? どういうことーーーーーーーー!!
きのうは本当にヒドイ目にあった。カノのモスグリーンだったり、キレイな色した案外おっきなアレとかを見れてラッキーだったけど、トータル的にはガッツリマイナスだ。だって、きょうのカノは、あきらかに俺をさけていたから。
目が合うどころか、完全に俺を視界に入れようとしない。ずっとグラウンドを見ている。通路側の席にいる俺を「絶対に見るもんか!」っていう断固とした意思を感じた。
きょうの俺は、万全のおねーさん対策を考えていた。対策というほど、難しいことではない。
無視することだ。
おねーさんは、俺が答えるまではずっと「とりっくおあとりーと?」って質問するけど、結局のところ返事をしなければ何もしない。
まあ、おねーさんの布地の少ないパンツを見てしまう恐れはあるけれども、おねーさんの姿は俺以外の誰にも見えない。周囲には、俺がアヤシイ行動をしているように見えるだけだ。
でも、それでも全然いい。女の子を無差別パンチラのつむじ風に巻き込んだり、俺に着替えをのぞかれたりしないで済む。
だからきょうは、どんなにおねーさんのセクシーショットをみせつけられても、脳内で「とりっくおあとりーと?」って言われても、終始無視することを決めた。どれだけ脳内で質問されようとも、耐え忍ぼうって心に決めていた。
でも、おねーさんは、結局一回もでてこなかった。
こういう日もあるのか! いや、よくよく考えたら、きのうがおかしすぎるだけだ。きのうが特別だったって考えるべきだ。
俺は、家に帰ると制服から私服にきがえた。そして、公園をつっきってカノの家に行った。
いくら気まずいからって、行かないわけにはいかない。俺は母さんに念を押されているのだ。カノを手伝う必要がある。キノちゃんの子守りをする必要がある。
ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪
ほどなく、インターホン越しに声が聞こえる。
「はい!」
「俺だけど」
「いまいく!」
そう言って、インターホンはきれた。インターホンにでたのは妹のキノちゃんだった。
ガチャリ
「よくきたな」
「カノは?」
「ばんごはんをつくっている」
「そっか、きょうは何してあそぶ?」
「いんぐりっしゅ!」
「あ、きょうは火曜日か。英会話の日だ」
俺は、くつを脱いでカノの家にあがる。
キノちゃんの幼稚園では、毎週火曜日に英会話の時間があるらしい。
キノちゃんは英会話の先生が大好きで、めちゃくちゃ真剣に聞いているらしい。
そのコーフンがさめやまないから、俺に英会話を教えてくれる。
先週の火曜日は、えんえん「とりっくおあとりーと」って言い続けていた。
そしてハロウィンだった日曜日は、悪魔のコスプレをしたキノちゃんに、俺は大量のカン◯リーマームをプレゼントしていた。
「はーいえぶりわん」
「はうわーゆー」
「ふぁいんせんきゅーあんどゆー」
俺とキノちゃんは、英会話をつづける。
英会話を教えてくれる先生は、ネイティブ。つまり外国の人らしい。だからキノちゃんの発音は、俺なんかよりはるかにいい。
「あいるくりーんあっぷ」
「おーけー」
「ぷりーずへるぷみーくりーんいっと」
「らじゃー」
「おーぷんざーういんどう」
「らじゃー」
「ぜいゆーずばきゅーむくりーなー」
そう言って、キノちゃんは掃除機をかけるまねっこをする。俺は「ゆーあぐっとあっといっと」と拍手をしてほめたたえる。
これを、無限につづける。英会話というより、ほとんどチェスチャーゲームだ。
キノちゃんの次は俺が掃除のゼスチャーをして、それをキノちゃんが拍手をしてほめてくれる。
ぶっちゃけ、結構疲れる。
きのうは戦いごっこで、おとといはダンスの練習。三歳の女の子のあそびは意外と体力勝負だ。そしてそれはキノちゃんもおんなじで、さっきまであんなにはしゃいでいたのに、まるで電池が切れたみたいに「コテン」とソファーで昼寝をしはじめた。
やれやれ。俺は、眠っているキノちゃんに毛布をかけようと、寝室に行った。そして毛布を手にしてリビングにもどってみると、キノちゃんはどこにもいなかった。そして俺の目の前には、
「とりっくおあとりーと?」
セクシーな小悪魔おねーさんが立っていた。その場所は、さっきまでキノちゃんが眠っていたソファーの上だった。
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