第20話 初投稿


「――よしっ!これで完成だ!」


そう言って俺はパソコンのモニターを見る。

――そこには完成したばかりのMVのサムネが映っていた。


「やったね!――大変だったけど楽しかったよ!」


「は、はい!楽しかったです!」


俺の言葉に、一緒に画面を見ていた莉子と杏優もそう続く。



「まさか一週間以内に完成するとは思わなかったよ……。」


 そう。なんと俺たちは、一週間も経たずにMVを完成させたのだ。


「私もだよ!……家でもつい作業しちゃったし!」


「わ、私もビックリしました!……私も家でずっとイラストを描いていました……!」


「二人もか……。……俺も完成が楽しみで家でずっと作業してたよ……。」


全員が同好会の活動時間外で作業をしていたようだ。

――ブラック企業もビックリの労働時間である。



「……でもね、私気付いたことあるの。………………優成君が凄すぎる。」


「あっ……そ、それ私も同感です……。」


二人はそう言うと俺に視線を向けた。


「――優成君が元々作っていた歌詞と曲がとても良かったの! だから一から作るよりはやく出来上がったの!」


「――わ、私の場合は、優成君がイラストを描くのが凄く上手だったんです! お陰でかなり分担して出来ました!」


「そうなの?!音楽だけじゃ無くてイラストまで上手だなんて……。」


「そ、それに頭も良くて……ボソボソ。……格好よくて……ボソボソ。」



「…………やっぱり優成君って凄いね。」


「……は、はい。一緒に活動したことで心から実感できました。」


二人はそう尊敬の熱い視線を送ってきた。



――うん。これに関しては自覚してる。否定できないわ……。


「ていうか、この身体が異常なんだよな……。」


――二人の会話を聞いた俺は改めてそう思った。

音楽の才能については、前世の知識なので才能があるかはわからないが、どうやら絵を描く才能があったようだ。

しかし、これに関しては自分でも感じていた。と言うのも、イラストを描いていく間に、イラストの陰の付け方やその他諸々の技法が、誰かに教わるまでも無く感覚でわかったのだ。

そして、どういう風に描けば自分が表現したいイラストが描けるのか、構想が鮮明に頭の中に浮かんできた。


――やはりチートだ。自分の事ながらそう思わずにはいられなかった。

――転生させてくれた神様は俺に何を求めているのだろうか。



「……と、とりあえず初めから再生してみようか!」


居たたまれなくなった俺は、そう提案して二人に視線を送る。


「そうだね!楽しみ!……緊張するけど!」


「う、うん!……わ、私も緊張する!」


「……お、俺も緊張する。」



「「「――あははは!」」」


――全員が同じ事を思っていたとわかって自然と笑いが起きた。

そして、少しの間互いに緊張をほぐす。



「――じゃあ、……いくよ?」


「「……うん!!」」



――そう言って再び深呼吸をしてから、俺はMVを再生した。



……………………



………………



…………



……




##################



「……」



「……」



「……」



――MVが終わった余韻で誰も言葉を出せなかった。


――やはり自分たちで作ったものだからだろうか。嬉しさや感動で溢れてくる。


――二人を見ると俺と同じように感動してか、涙目になっていた。



「……これが音楽活動なんだな。……すごい。」

前世でもおそらく今世でも、世の中には音楽活動をしているアーティストはたくさん居るだろう。

前世では趣味らしい趣味は無かった俺にとって、音楽活動をしている人達はただ輝いているように見えたが、実際は彼等は曲を作り終えたこの瞬間が誇らしく好きで仕方なかったのだろう、と今なら思える。

そして同時に、この曲を皆に聴いてもらいたいとも思った。



「……じゃあ、ToutubeにMVを上げようか!」

MVを見た人の反応を想像して待ち遠しくなった俺は、二人にそう提案した。


「――っあ!そ、そうだね!早速投稿しようよ!」


「――っは、はい! どんな反応が来るのか楽しみです!」



――そうして俺たちはToutubeに新しくMalopsのチャンネル作り、初曲「A.Y.R」を投稿したのだった。









###########

【作者】

どうも作者です。

11月は忙しくてなかなか書けずもどかしかったです………。

12月は年末休みがあるので話を進めていきたいです。

※小説には関係無いですが、これを書いてる今日(11/26)は作者にとって良いことがありました。

→某Vtuber事務所の6期生の初配信でした!!!感想は「大物だ!!」につきました。リアタイ ………YMD!!


【追記】

「A.Y.R」は察しの通りAyuYuseiRikoの頭文字であるが、この並びにしたのは、女子を優成の間にすることで女子の間に優劣を作らないため。と言っても杏優が先頭だが、それはMalopsに加入順ということになった。

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