第12話 部活見学と提案
「よし。じゃあ部活見学に行くか!」
放課後になったので俺はそう言って席を立つ。
そして教室を出ようとしたところで、後ろから声をかけられた。
「あ!優成くん!」
――呼ばれた方に振り返ると、そこには莉子と美玖がいた。
「どうしたの?」
「えっと……よかったらなんだけど、一緒に部活見学いかない?」
莉子は緊張しながらも俺を見てそう言う。
「それに美玖たちがいれば、女子に囲まれそうになっても助けれるよ!」
そう美玖も莉子の言葉に続く。
――確かにそうだ。女子に囲まれるのは嬉しいけど、そうなると部活見学もまともにできなくなる。
そう思った俺は莉子と美玖と一緒に行くことにした。――ていうか美玖は一人称が美玖なんだな。
「っとその前に――――よかったら杏優ちゃんも一緒に行かない?」
俺はせっかくなので杏優も誘うことにした。
「え……??私もご一緒していいんですか?」
杏優は心配そうな顔をして俺たちを見る。
「私はいいよ!クラスメイトになったんだし仲良くしようよ!」
「そうだね!美玖も大丈夫だよ!これから仲良くしよう!」
そう莉子と美玖が答えると、嬉恥ずかしな顔をしながらも杏優は一緒に来ることになった。
「そういえば、3人ともどの部活に入りたいか決まってるの?」
俺は気になったのでそう聞いてみた。
「はいはい!美玖は決まってるよ!美玖は運動頑張りたいからバレー部!!」
そう言って美玖は元気よくスパイクを打つポーズをした。
「そうなんだ!確かに自己紹介の時、運動得意って言ってたもんね!」
そういうと、美玖は「覚えてくれてたんだ!」と言って嬉しそうにした。
「私も決まってるよ!私はピアノとか弾けるから吹奏楽部かな!」
莉子はそういって弾ける楽器について教えてくれた。
「結構弾けるんだね!凄い! もし機会があれば、楽器教えてほしいな!」
そういうと、莉子は「もちろん!」と言って美玖同様嬉しそうにした。
「杏優は?何にするか決めたの?」
俺がそういうと、杏優は恥ずかしそうにしながらも「美術部」と答えた。
「絵をかくの好きなの?」
「うん!でも画用紙にとかじゃなくて、液タブとか使ったイラストのほうだけどね!」
そういって杏優はいつもより元気に話してくれた。
いくら恥ずかしがり屋だからといっても、趣味のことになればそんなことは関係ないのだろう。
「そうなんだ!でも俺もそっちの方が好きだよ!アニメのイラストとか!」
「え?!優成君もしかしてアニメ見てるの?!どんなやつ?!」
俺がアニメを見ると言ったとたんに杏優の反応が激変した。
――杏優は所謂オタクなのだろう。いやこの世界だと女子がよくアニメを見るからそうでもないのか。
――この前テレビを見たときに流れてきたアニメは、女子が主人公で男はヒロインみたいなポジションだったし。
それに気づいた時は悲しかった。だってどのアニメも逆ハーレムだったんだから!
そんなアニメを見ても俺は楽しくない!ハーレムが正義である!
でも少しとはいえ男が主人公のものもあったのだ。――予算が少ないのかどれも駄作であったが。
――もしかしたら前世で女子の大半がオタクの男子をやけに嫌っていたのは、ハーレムアニメとかを見て興奮しているオタク男子を気持ち悪がっていたからなのかなと少し理解をしてしまった俺である。
俺だって今世で、男を何人も連れまわしてイチャイチャするようなアニメについて、女子が興奮して語っているのを見たら引いてしまうだろう。――ごめんなさい。前世のクラスの女子。
とはいえ話は戻るが、前世ならともかく今世のアニメについて聞かれてもわかるはずがない。
「えっと、アニメとかはあんまり知らないんだけど、イラストレーターが書いたアニメのキャラクターのイラストとかをSNSで見たことあるってことかな。」
俺はそう返す。すると杏優は、俺の少し困惑した表情を察したのか、将又自分のオタクみたいな発言を俺の前でしてしまったことに気づいたからか、泣きそうな顔になっていた。
「ご、ごめんね優成君!気持ち悪かったよね……」
杏優はそう言って俯く。
「い、いや!そんなことないよ!イラストレーターってすごいなって思っただけだから!別に杏優がアニメが好きな人でも嫌とは思わないよ!俺だってそういうのは好きな方だから!」
前世にもオタク女子はいたわけだから、この世界にもオタク男子はいないとは限らないはず。
そう思った俺は全力で否定して慰める。
「?!そ、そうなんだ……。うん……。あ、ありがとう!」
するとその言葉がかなり嬉しかったのか、元気になってくれた。
「えっと、杏優はイラストを描くって言ったけどどんなの描いてるの?」
俺がそう聞くと、杏優はスマホをだしてSNSに投稿をしたというイラストを見せてくれた。
「?! ……こ、これを杏優が描いたの?!」
「う、うん!!」
そこには、おそらく何かのアニメの主人公と思われる美少女の絵があった。
そして、注目すべき評価はリスイートが3万、いいねが8万と書かれていた。
さらに――
「フォ、フォロワーが30万人?!」
杏優のアカウントを見てみるとそこにはそう記されていた。
[もう既に十分プロのイラストレーターじゃん!凄すぎる!!]
そういうと杏優は、「あ、ありがとう!……ございます。」と照れながら言った。
「ていうか、杏優がこのイラストレーターだってこと俺たちにバラしちゃだめじゃないの?」
――――その瞬間杏優は「あっ?!」と言ってから慌てて周りを見渡した。
もちろん周りには俺と美玖と莉子がいた。
「ん?どうかしたの?杏優ちゃん?」
杏優が自分の方を見てきたことに気づいた莉子はそう言った。
「えっと、い、今の聞いてた……??」
杏優は、そう恐る恐る二人に問いかける。
「ん?今のって?……ごめん、二人の邪魔しないように美玖と話してたから。」
「うん!美玖も聞いてなかったけど何かあったの?」
――その二人の反応を見て、聞かれていなかったことに杏優は安堵していた。
「ご、ごめん!なんでもないよ!」
そう言って二人から目をそらして俺の方へ向くと、杏優は「セーフ」とジェスチャーをした。
「でも俺にばれちゃったけど大丈夫?」
そう冗談めかして言うと、杏優は「優成君になら、ばれてもいいかな……」と言った。
――今のほぼ告白なのでは?いや、勘違いか?
俺はしばらくその言葉に悶々としたのだった。
#####################
それから俺たちは、美玖のバレー部と莉子の吹奏楽部と杏優の美術部に見学に行った。
もちろんそこに行くと必ずマネージャーの誘いを俺は受けていたが、
相手が傷つかないように明るく笑って断った。――おかげでとても疲れた。
そしてその中で、美玖はバレー部の活動方針や練習風景、部内の雰囲気などが良かったこともあって、まさかのその場で入部してしまった。
そして「このまま部活をしたい!」といって、体験を名目にバレー部の練習に加わってしまった。
一方で部活見学を終えた莉子と杏優は、何かあったのか部活にはあまり乗り気でなくなっていた。
「二人とも見学する前より元気ないけど、なにかあったの?」
俺がそう聞くと二人とも遠慮がちに頷いた。
そして莉子が先に理由を話し始めた。
「私は、楽器を弾くのが好きだから吹奏楽部に入ろうと思ってたんだけど……見学してみたら、私は部活とかの大勢で楽しく曲とかを弾いたりするよりも、自分で創作活動とかをする方が好きってことに気づいたの。」
そう言って莉子は少し寂しそうな表情をした。
――たしかにそういう人もいるな。別にそれが悪いことではないし。
けど莉子を表情を見ると、莉子は今回のことで仲間や友達との活動を心から楽しむことができなくなるのではないかと心配になった。
そして次に杏優が話し始めた。
「わ、私はアニメのキャラのイラストとかそういうのが好きだから美術部に入ろうと思ったんだけど、見学したら学校のイベントのポスター作製とか、コンクールに応募するための絵を描いたりとかしてて、私が想像していたのと違うなって思ったの。私はそういうのじゃなくて、可愛いイラストとか漫画とか描いたりするのが好きだから。」
そう言って杏優も残念そうな表情をした。
――俺はそんな2人の表情を見ていたたまれなくなり、何とかしてあげたいと思った。
「なにか俺が手助けできればいいんだけどな……。」
そう考える……。――と、ふと頭の中に1つのアイデアが湧いてきた。
そしてそれは、考えれば考えるほどいいアイデアだと思ってしまう。
もしこれができるなら、これは俺たち3人にしかできないことだし、何より楽しく活動できる。
そして立派な青春にも成り得るだろう。
そう思った俺は、考えを整理し2人に提案してみることにした。
――動画投稿サービスで音楽活動をやってみないか、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます