第15話 MV作成と……
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作者
・大変更新が遅くなってしまい申し訳ないです。色々忙しくて書く時間がありませんでした。ですが、この期間に大まかな今後の展開を考えることが出来ました!
今後も忙しいですが、言い訳しないでなるべく更新を頑張りたいです。
よろしくお願いします。
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Malops――これが俺たちのグループ名だ。
この名前だけを聞けばいい名前と思う人はきっといるだろう。
もちろん俺は良い名前だと思った。まあ、俺が提案したんだが。
しかし、ほかの二人もいい名前だと言ってくれた。
なので俺はこの名前に自信を持つことができた。
というわけ、でこの名前の由来について皆に教えることにする。
予め言うが、これは俺の無い知恵を絞りだして2時間近く考えた末の名前なので馬鹿にしないでくれれば幸いだ。
では発表する。これは――
Malops――Make a lot of people smile
――である。
つまり、たくさんの人を笑顔にする。という意味だ。
個人的には頭文字を取ればそれほど悪くないと思うが、内容を見れば中学生英語である。
なので皆は俺のネーミングセンスについては期待しないでほしい。……。
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――というわけで、俺たちは音楽活動で最も大事と言っても過言ではないチーム名を決めることができた。
もちろん決める前に、インターネットでMalopsを検索したが特に引っかからなかった。
なので俺たちが人気・有名になるにつれて検索に引っかかるというわけだ。エゴサがしやすい。
ほんとはエゴサをするのはあまり良くない――自分への悪口が見えてしまうから――と言われているが、俺の場合は別だ。理由は簡単。そもそも前世で顔が悪かったせいで悪口に対する免疫というか耐性がついているのだ。
まあ、一番大きいのはこの世界では俺は数少ない男性だし、イケメンだからである。
――ただ心配なのは、これからの音楽活動で顔出しをするかまだ決めていないことだ。
俺的には、せっかくこのイケメンフェイスになったんだから存分に晒していきたいと思っている。
しかし、何も対策せずにそんなことをすればさすがの俺でも危険なのは理解できる。
なのでそこは、男性護衛官などと契約してから決めたいと思う。
ちなみに男性警護官というのは、国立や私立で存在している男性警護官の訓練学校などを卒業して、男性警護官になるための試験を受け、その資格を取得している女性たちのことだ。彼女たちにはもちろんランクがあり、S級-C級ライセンスまで存在する。また、その試験は国によって開催され毎年更新する必要がある。というのも、それぞれのライセンスには上限人数がいるため、毎年変動するのだ。それぞれS級が10人A級が50人B級が100人C級が300人である。そのため毎年激しい競争が繰り広げられているらしい。――試験内容については俺にはわからない。
ここで、これだけを聞いた人は「なぜこんなにも大変そうなのに男性警護官に固執するのか」と思うだろう。
しかし、やはりこれにはそれ相応のメリットがあるのだ。
その一つは、国からの補助金だ。これは、いわば最難関国家資格である男性警護官の試験に合格している国にとって優秀な人物の生活を補助するための制度だ。この補助金の額は、上級のライセンスを持っている人ほど高い。
これによって、ライセンスを持っている人は、働いていてもいなくても生活するお金に困らなくなる。
もちろん、ライセンスを持っている人はどこかの男性警護官会社や、自分で立ち上げた男性警護官の会社に所属する必要がある。そして所属証明書を国に提出する必要がある等と、いろいろ決められている。
そしてもう一つは、やはり男性の近くに居れることだ。
正直この理由が一番大きいと思うが、それは仕方の無いことだ。
何故ならこの世界の男性は、働いている人などごく僅かであるし、殆どは家で専業主婦――と言っても何もしていないで引きこもっているのが大多数らしい――をしているので街中で見かけることはあってもその確率はごく僅かであるためだ。
その点男性護衛官になれば男性の傍に合法的に居られるし、見ることもできる。
さらに運の良い場合はそのまま警護している男性と結婚する可能性もあるのだ。
現にそれで結婚している男性護衛官の数は100はくだらないと言われている。
――この世界の女性がそんなことを知れば、かなりの数が男性警護官を目指したくなるのも仕方ないだろう。
驚異の結婚率である。まあ、女性からすれば警護相手の男性を選ぶことは出来ないし、うまく対応できなくて訴えられることもあるというが。
しかしそれを考慮してもメリットの方が大きいから人気なのだろう。
と言うわけで俺も彼女たち男性警護官の期待に応えるべく、契約を結ぶ可能性はある。妹と母さん次第だが。
また、ライセンスは毎年更新と言ったが、仮に今まででS級やA級などを取得した場合は、その警護官の個人データベースにきちんと記載されているので(国が管理)、契約時にA級の警護官を要求された場合は、必ずしも現役でA級ライセンスを持っている必要は無いのだ。まあ、契約するかはあくまでも男性側の意志なのでなんとも言えないが。
――っと、大分話が逸れたが音楽活動について話し合いをしたいと思う。
「えっと、Toutubeのチャンネル名はチーム名と同じで良いよね?」
「う、うん!」
「良いと思うよ!」
二人に了承を得たのでチャンネル名は「Malops 」に決まった。
「じゃあ、一応Switterでもアカウントを作りたいんだけど、それもMalopsでいい?」
「うん!」
「いいよー!」
そうして俺たちはToutubeとSwitterでアカウントを作成した。
――ここが俺たちMalopsのスタート地点である。
「よし!じゃあ、今日からMalopsの活動を始めようか!」
「う、うん!これからよろしくお願いします!」
「頑張ろう!これからよろしくねー!二人とも!」
そう互いに挨拶をして俺たちは活動を始める。
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「じゃあ、先ずはMVで使う曲を作るための作曲からだね!一緒に頑張ろう!莉子!」
「う、うん!緊張するけどやるだけやってみる!」
莉子はそう言って緊張感を漂わせていた。
「いや、そんなに緊張しなくて良いよ。実は俺、前から音楽活動したかったから、もう結構前から曲の構想が決まってるんだよね。」
俺は前世の知識の音楽を使うのでそう予め言い訳をしておいた。
もちろん前世の知識を使うが、全部覚えているわけではない。
なので、前世の曲を完璧に再現することは出来ない。
しかし、これからこの世界で音楽活動をするのだから、自分達の力を鍛えるためにもまねをするのだけでは良くないだろう。なので自分たちで作詞作曲の練習をしつつ参考にしたいと思う。
もちろんいつかは、完全オリジナルの曲を作ってみたいとも思うが、先ずは人気を獲得する必要があるだろう。勿論お金だって欲しい。お金さえあれば大抵のことが出来る。
俺はお金があればやりたいことは既にたくさんあるが、その中にはこの世界だからこそ価値のある活動もある。
そしてそれは俺にしか出来ないことでもある。
――今はまだ言うべき時ではないから言えないが。
「そ、そうなんだ!良かったよ。いざ作曲するとなると、何からすれば良いかわからかったから。」
そう言って莉子はほっと胸を撫で下ろした。
「えっと、これが歌詞だよ。作曲については莉子が主導でやってみよう!一応全部じゃ無いけど俺が考えたメロディーとか伝えるから、思いつかなかったら参考にして!どういうメロディーにするかは莉子に任せるから!」
「うん!わかった!!ありがとう!やってみる!」
そう言って莉子は慣れない様子でパソコンの楽曲制作ソフトで作曲をし始めた。
ちなみにこのパソコンは学校にあったやつである。いくら学校から予算を貰ったとは言え、それはパソコンを買えるほどのはずも無いので自分たちの収入で買うつもりだ。学園からは結構良い感じの部屋を貸して貰えるだけありがたいと思っている。まあ、これくらい緩いほうが俺たちも活動しやすいから良いだろう。
そして莉子はパソコンを使うのが初めてだと言っていたので説明書を渡しつつ俺が教えることにした。
また、莉子には自前の楽器と楽曲制作ソフトを使って作曲して貰う予定である。
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「じゃあ、こっちも始めようか!」
俺は目の前に居る杏優に向けてそう言った。
「そ、そうですね!頑張りましょう!!」
そう言って杏優は気合いを入れた。
「じゃあ、先ずは絵コンテの作成だね。ここに歌詞があるからある程度一緒に構成を作ってみようか!
その後は楽曲が出来たらもう一度再構成して落とし込んでいこう!」
「は、はい!」
そうして俺たちは絵コンテの大まかな作成を始めた。
と言うのも、まだ楽曲が完成していないので具体的な絵コンテは作成できないのだ。
なので歌詞から想像して作ったり、初めや終わりの場面についてなどを考えていった。
俺の方は初めてで難しくうまくいかないが、杏優はイラストを頭の中で想像できるのか綺麗に構成を作っていた。
それを見て俺は、人気イラストレーターは凄いなと改めて思った。
――それから俺たちはそれぞれの作業に没頭した。
当たり前だがMVが直ぐに完成するはずも無い。
しかし作曲自体は、
そして次からは、この曲を聴きながら絵コンテなどの作成が出来るので、MV作成にかなり近づくことが出来た。
「みんなお疲れ!」
「は、はい!お疲れ様です!」
「そうだね!!お疲れ様ー!次も頑張ろうね!」
――俺たちは達成感からか自然と笑顔になっていた。
勿論俺も皆と充実した活動が出来て楽しかった。
そしてそろそろ帰ろうと思い、外へ視線を向けると既に外が真っ暗になっていることに気付いた。
……やばい。母さんと優菜に連絡してない。
それに気付いた俺は、直ぐさま二人に許可を取って母さんに電話をかけようとした。
――しかし、作業に集中するために電源を切っていたのが仇となったのか、電源を付けた途端に何十件もの通知が鳴り響いた。それは勿論、母さんと優菜からの通話やメッセージであった。
それを確認して絶対やばいと確信した俺は、申し訳ない気持ちと少しばかりの恐怖を感じつつ、急いで母さんに電話をかけた。
「もしも――」
「――優ちゃん!? (――――優菜!優ちゃんと連絡ついたわよ!)」
「(――お母さんほんと?!貸して!!)」
「(――ちょっと優菜!お母さんまだ優ちゃんと話してな――)」
電話の向こうでそうやり取りするのが聞こえてくる。
「お兄ちゃん!!」
「あ、優菜。……えっと……ごめん連絡遅くなっ――」
「――お兄ぃぃぃちゃゃゃーん!!!」
連絡が遅れたことを謝ろうとした瞬間に、そう叫ぶ優菜の声が部屋に響いた。
「本当に本当に本当に心配したんだからね!!今どこに居るの!?誰かに何かされたの!?」
「ご、ごめん……。実は今学校にいるんだ……。何か事件に巻き込まれたりした訳じゃ無いよ…。」
――優菜の勢いにたじろぎながらも俺はそう答える。
「よかった!!――もしお兄ちゃんに何かした奴が居たら、私そいつのこと――」
「う、うん!心配してくれてありがとう!大丈夫だから!」
「――っ!そ、そっか……。よかったよ……。……うん!安心した!」
――優菜の口から聞こえてくるはずのない物騒な言葉が聞こえてきた気がしたので、俺は話を折った。
「じゃあ、今から優菜がお兄ちゃんを――――って痛っ!(――優菜!いい加減に代わりなさい!)(――え!ちょっと待ってよー!)(――待たないわよ!!十分話したでしょ!それに私にきた電話だもの!!)(ああ……まだ少ししか話せてないのに……)」
何かを言おうとしていた優菜だが、勝手に母さんの電話を奪った事で怒られたようだ。
そして、優菜から電話を取り戻した母さんが優菜と代わる。
「優ちゃん!無事で本当に良かった!心配したんだから!」
――母さんはそう言って俺を心配してくれていた。
「ご、ごめん……母さん。遅くなるって連絡して無かったよ……。」
「ううん……。いいのよ……優ちゃんが無事なら。」
「そ、そっか。……心配してくれてありがとう。」
「何言ってるの!そんなの当たり前よ!」
自分のことでこんなに心配されたことが無かった俺は、母さんの言葉で少し涙ぐんでしまった。
それと同時に、どれだけ二人に心配をかけたのかが伝わってきた。
「ありがとう……。……本当にごめんなさい。」
「……いいのよ!次から連絡してくれれば!――――それで優ちゃん……今学校にいるって聞こえたけど……」
「あ、うん!実は、今日から部活動の見学期間が始まっててね。それで今日入る部活を探してたんだけど――」
「なるほどね。うんうん。――――って、え?! 優ちゃん部活動始めるの?!聞いてないわよ!?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「言ってないわ!(言ってないよ!!)」
俺の言葉に、母さんだけで無く一緒に聞いているらしい優菜までそう言った。
「ご、ごめん。――今更だけど……、俺が秀英学園に入学したのは、勉強を頑張ることと婚約相手を決めるってことは勿論だけど、部活とか行事とかを楽しんでみたいって思ってて……。だから設備が他よりもいい秀英学園を選んだんだ。」
そう二人に話す。勿論今言ったことは嘘じゃ無い。
――理由の全てでは無いが。
「そ、そうだったのね。(そうだったんだ。)」
「う、うん。それで、部活を見学してたんだけど、色々あって結局自分たちで同好会を作ることにしたんだ。」
「同好会……?(ん……?自分たち……?)」
俺の言葉に母さんと優菜はそれぞれ別の部分に疑問を持ったが、まとめると言いたいことは「何の活動」を「誰としているのか」である。
俺的には、一応まだ未成年だから親の許可とか必要だと思う。それにこれからの活動がどうなるかまだわからないが、もしうまくいけば後々親の承認が必要になることも出てくると思うので、今のうちに音楽活動のことは言っておこうと思った。――それに
……さっきの様子で優菜が少し心配になったが。
「実は――」
そういうわけで、俺は彼女たちと音楽活動をすることや来年から生徒会に入ることになることを二人に説明した。
俺はてっきり反対されると思ったが、二人は、「俺の好きにやっていい。勿論応援してる。でも無理はしないで何かあったら何でも相談して。」と言ってくれた。――――その言葉の間々に「女性の怖さ」や「俺がどれだけ女性に狙われる可能性があるか」などを言われたが。
――――そしてやはりというか何というか。護衛官を付けることが条件になってしまった。
それもなんとA級の護衛官である。A級護衛官ともなるとこの国で100人しかいないため、かなりの費用がかかる。
なので俺は、「いくら何でもA級護衛官は費用が高すぎるからC級、せめてB級にして!」と母さんを説得したが、当の母さんは「こう見えてしっかりと稼いでるから大丈夫よ!!」とA級を雇うことを譲らなかった。
加えて「これから仕事が忙しくなって家事もしっかり出来なくなるから、どのみち家政婦を雇おうと思ってたの!だから丁度良かったのよ!それに護衛官と家政婦を両方雇う方が高いのよ?」と言った。
「……え?どういうこと?……護衛官と家政婦は同じ人なの?」
母さんの言葉に違和感を覚えた俺はそう聞いた。
母さんの言い方ではまるで護衛官=家政婦に聞こえたのだ。
「そうなのよ。実は、護衛官を派遣する会社って結構沢山あるの。理由は、国でライセンス保持者は「会社と契約するか自分で会社を作るか」のどちらか一方を選ばなくちゃいけないって決まっているからなのよ。それで大体の人は護衛官の派遣で有名な会社と契約するんだけど、中には自分で会社を作る人もいてね。それで護衛官を派遣する会社が沢山あるの。だから、私たちはその会社の中で条件や信頼や実績で契約したい会社を選ぶのよ。それでその中には、護衛官が家事と護衛をしてくれるっていう会社もあるの。――でもそういう特殊な会社は、規模が小さかったり実績が少なかったり信頼が少ないから、契約しないと会社の善し悪しがわからないのよね。」
そう言って母さんは詳しく説明してくれた。
――なるほどな。護衛官派遣のライバル会社が沢山あるレッドオーシャンから抜き出るには、他の会社には無いことをしないといけないということか。
そしてそういう戦略をとるには大企業より小企業の方がリスクが少ない。
だけどその反面、大企業より信頼などが少ないと。
「じゃあ母さんは、まだ信頼してるわけじゃ無いんだよね?どうするの?」
「それは、契約前に面談してそれを鑑みて判断するの。」
「なるほど。面談できるんだ。」
「ええ。だからそれで判断できるのよ。――――じゃあ、護衛官の契約について詳しくは優ちゃんが家に帰ってからにしましょう!母さん仕事が忙しくなるのは、来週からだから今週の休日に護衛官と面談することになるわ。
それと、もう暗くて危ないから迎えに行くわ!待っててね!」
「わかった。ありがとう!」
そう会話を終えて杏優と莉子を見る。
「ごめん!長電話しちゃって!――――それで、二人ともどうかしたの?」
そこには、やけに落ち着きの無い様子の二人がいた。
俺が電話をしてた間からこの様子だったが、どうかしたのだろうか。
「え、えっと……ごめんなさい。私……電話聞いちゃって、それで……」
「は、はい……私も電話を聞いてしまって……それで……」
「ああ、それは別にいいよ!部屋の中で電話した俺が悪いし!」
二人の様子から、俺の電話の内容を聞いてしまったことを詫びているのだと思った俺はそう言った。
「あ、うん……それもそうなんだけど……その――」
「は、はい……電話を聞いてしまったのは申し訳ないと思っていますが……その――」
「「お、お母様がいらっしゃるのは本当でしょうか?!」」
「う、うん。迎えに来るって言ってたよ。」
「やっぱり!どうしよう杏優ちゃん……」
「は、はい!どうしましょう莉子ちゃん……」
俺がそう答えると、二人とも余計に落ち着きが無くなってしまった。
「あ、そういうことか……。そっか。そうだよな。」
その様子を見て俺も気付いてしまった。
母さんが迎えに来るって事は、つまり学校に母さんが来るということだ。
それはつまり、俺と一緒に居る杏優と莉子も母さんと会うことになるだろう。
だってこの世界では、暗い中男性を一人にする女性はいないからだ。
つかり俺が帰るまで二人は帰らない。……いや帰れないのだ。
そして杏優と莉子は、俺と一緒に音楽活動をしていて遅くまで密室で三人でいたということになる。
それはつまり、男性を女二人で監禁していると捉えられてもおかしくないのだ。……特に息子溺愛の母親とかにだ。
そうなると、とても厄介である。……そして母親には会いたくないだろう。
だってこれは、前世で言えば美少女と男二人が暗くなるまで密室で過ごしたということになる。
――事件である。卑猥である。そしてその上美少女を溺愛している父親が今からここに来るのである。
しかも男達はその父親と会うことは確定で。
――地獄である。これを見て良い感情を抱く父親などいないだろう。
そう考えると、二人の様子に納得できた。しかし、だからといって俺が何を言ったところで意味は無いだろう。
仮にもしここで帰れば、余計に厄介なことになるし、俺が音楽活動を二人としていることも言ってるのだから逃げ道は無いのである。恐らくこの世界の一般的な息子溺愛の母親からは、「性的な目的で息子に――」や「息子は格好よくて可愛いくて!それに比べてあなたたちは――」など言われるのだろう……。
そして逆に息子が母さんに「彼女たちにそう言うこと言わないで」と言えば、「息子にに何を吹き込んで――」や「弱みを握って――」や「あなた達のせいで息子に――」などと言われてしまうだろう。
そして俺は母さんから溺愛されているだろう。それは転生して初めて母さんに会ったときや、今まで過ごしてきた間でわかっている。そしてこの世界の母親は、母さんを含め息子のためなら何でもしようとする。
なので、俺が言っても逆効果だし意味が無いのだ。――母さんがそういうことを言うのは想像できないが。
でも娘の優菜が少しそういう気配を感じる時があるから、母さんもそうなのだろう
――そう考えを巡らせていると、母さんから学校に到着したという連絡が届いた。
母さんからは、部室を見てみたいと言われたのでこの部屋までの経路を教えた。
――どうやら母さんはここに直接来るらしい。
俺は親切心で二人にその事を伝えたが、二人の顔は真っ青になっていた。
「そ、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ!母さん優しいから!!」
「 」
「 」
俺がそう言うも、最早俺の言葉は二人には届いていなかった。
すると――
「コンコン 優ちゃんー?」「お兄ちゃんー?」
「っ?!」
「っ?!」
――と母さんと優菜の声が聞こえてきた。
どうやら母さんだけで無く優菜まで来たようである。
杏優と莉子については言わずもがなである。
「いるよ!入って良いよ。」
そう俺が答えると、母さんと優菜が入ってきた。
そして少し俺と話しながら部屋を見渡す。
そして二人の目線は杏優と莉子に固定された。
「あなたたちは、優ちゃんが言ってた同好会の?」
二人を見て母さんがそう言った。
「は、はい!わ、私は!優成君と一緒に音楽活動をさせて頂く事になりました!山吹莉子と言います!」
「は、はい……!!同じく南杏優と言います……!!」
二人は母さんを怖がりつつも挨拶を返した。
「そう。貴方たちなのね。……うん。なるほどね……」
母さんはそう言って二人を観察する。――俺はこの時点で恐怖を感じたが二人は大丈夫そうだった。この世界では普通なのだろう。
「――じゃあ、色々聞きたいこともあるから、少し隣の部屋で話しましょうか。」
そう思ったつかの間、母さんがそう言った。
俺はその言葉に杏優と莉子を見たが、二人とも覚悟を決めた顔をしていた。
――え??何が始まるの?怖いんだけど……死なないよね……?
「それじゃあ行きましょ。――優ちゃんはここで待っててね!」
母さんはそう言うと優菜も連れて、杏優と莉子と隣の部屋に移動していった。
――――そしてそれから数十分後、俺は戻ってきた
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