玉川上水緑道を歩くだけの話。にも関わらず驚くほど引き込まれる作品。

この作品は主人公が玉川上水緑道を歩くお話です。展開自体はそれだけ。にも関わらず、あっという間に読み終えてしまうほどひき込まれる作品です。
もちろんただ歩くだけではなく、主人公の色々な葛藤が歩きながら提示されます。その葛藤、そのエピソードはまるで読んでいる自分がその境遇にいるかのように錯覚するほどリアルに描かれています。自然と自分自身を主人公に重ねて読んでしまい、アンニュイながらもどこか落ち着いた気持ちにさせてくれるのが魅力的です。
また軽妙洒脱な文体も、そのひき込まれる要因の一つでしょう。リズムのよい文章は驚くほどスルスルと頭の中に入ってきて、文字を追っているだけでも爽快感を味わえます。

その他のおすすめレビュー

遠木ピエロさんの他のおすすめレビュー29